町田市議会議員 会派「自由民主党」/(一社)落語協会 真打 三遊亭らん丈【公式ウェブサイト】

三遊亭 らん丈

気分障害(うつ病、うつ状態等)者の自助グループリボーンの会主催『講演会と演芸の集い』に参加して町田の、らん丈

2003.02.17(月)

 さる2月15日(土)、町田市原町田5丁目にあるコメット会館にて上記の会があり、リボーンの会の代表とは旧知の間柄なので、それに参加させていただきました。
 内容は、前半がリボーンの会の代表を務める本牧南朝さんによる講談、横浜市青葉区健康保健センター長を勤める医師にして、全日本社会人落語協会に所属する空巣家小どろさんによる落語「たらちね」、いまやトキ並みの貴重な存在、女流曲独楽師三増れ紋さんによる曲独楽。
 後半は装いを改め、北里大学名誉教授・医学博士村崎光邦先生による、講演会「うつ病−正しい理解と正しい治療」という二部構成のプログラムでした。

 南朝さんは東農大落語研究会に属していたのですが、本当は講談研究会があれば入っていたのでしょう。どこかの大学に講談研究会はないことはないのでしょうが、ぼくは聞いたことがありません。この日は講談を語るため、釈台と張り扇まで用意した本格的なもの。マクラで町田市の市鳥はかわせみと紹介していましたが、町田市民でもそれを知らない者が大半でしょう。それにしても、なんで町田市は市の鳥をかわせみに制定したのでしょうか。大いなる疑問です。
 次に高座に上がった空巣家小どろさんは、保健所医師だそうですが、ぼくが聞いた限りでは、さすがに社会人落語選手権で優勝しただけのことはあり、堂に入った高座をつとめていました。この日は古典落語でしたが、今度は是非自作の健康落語を聴いてみたいものだと、そんな思いにさせる高座でした。
 演芸のトリを取ったのが三増れ紋さん。彼女は、たまたま同じ小田急線沿線に住んでいることもあり、ぼくが町田で落語会を開いたときには、来てくださったこともあります。
 それにしても、独楽を廻してそれを生業にしようと決心した彼女は偉いものです。なぜなら、彼女はいま東京では最も若い曲独楽師であり、彼女がいなければその芸を継承する女流が絶えてしまったかもしれないのですから。

 中入りをはさんで後半は、お目当て北里大学名誉教授村崎光邦先生による講演会「うつ病−正しい理解と正しい治療」。
 たしかに現代社会は、人にさまざまな負荷をかける社会の謂い、といっても構わないほどのストレス社会ですから、ぼくの周りをみても、うつ病に苦しんでいる方が結構いるものです。
 WHO(世界保健機関)によると、うつ病の罹患率は全人口の約3%といいますから、日本ならば約360万人の方々が罹病していることになります。

 落語家は商売柄、気分が落ち込んでは成立しえない仕事ですから、逆にうつに悩むものがおり、その例が先年お亡くなりになった桂枝雀師匠です。枝雀師匠は傍からは、陽気のかたまりのように見え、そのイメージで売っていましたが、聞くところによると、実は神経が繊細で、考えすぎるほどになにごともよく考える師匠だったそうです。
 村崎先生によって、その謎は解けました。そもそも、真面目、几帳面、しかも責任感が強い性格の人ほど、うつ病に罹りやすいのだそうです。
 だから、枝雀師匠は生前うつ病に悩んだのでしょう。

 そういえば、こんなデータがあります。メンタル・ヘルス研究所によると、約18年間にわたって産業人の「心の健康診断」として行ってきたJMI調査の副産物として、係長より課長、部長、役員、と地位が上昇するほど、精神医学的健康度を示す尺度のうち得点が高くなるものがあることが分かった、というのです。
 それは、(1)前うつ(几帳面、律儀、気配り)(2)発揚(調子の高さ)(3)自己顕示(派手さ、自分をアピールする積極性)(4)粘着(粘り強さ)の4尺度だそうです。
 これを「出世のテトラ(プロモーション・テトラッド)」と名づけました。

 前うつは、「うつ病になりやすい」人であり、うつ病患者では相関関係がはっきりみられるのに、「出世のテトラ」ではうつ病の発病率は低い。つまり、日本の管理職はうつ病になってもおかしくない性格をもちながら、「躁」でがんばっている人ということになります。
 つまり、競争社会を勝ち上がるには、病気にさらされながらもそれを乗り越え、跳ね返さなければいけないということなのでしょうか。早い話が、人間から人間性を除去したものほど出世できることのようにも思え、日本の競争社会の激烈さがよく現れた調査結果です。

 講演で村崎先生も強調していらっしゃいましたが、うつ病は気の持ちようで起こるものではなく、ストレスなどにより、セロトニンやノルアドレナリンといった脳内の神経伝達物質の働きが悪くなったことによって起こる、と考えられているのですから、くれぐれも「しっかりしろ」と励ましてはいけないのだそうです。しっかりしなければ、と何よりも痛切に思っているのが、当の本人なのですから、それは禁句です。足を骨折している人に、走って足を鍛えろといっているのに等しいというのですから、それがいかに、かけてはいけない言葉なのかは、お分かりいただけるかと思います。

 ちゃらんぽらんにして無責任で、交わした約束は常に反故にし、人のことは一切眼中になく、いつも自分の幸せのみを願い、それ以外はなんにも考えず、ただ欲望の赴くままに生きているという方は、うつ病の心配はしなくても好いでしょうが、そういう方とはあまりお近づきにはなりたくないものです。

 最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。