久しい間、芸人に仕事を頼む手段は、ほとんど電話に頼っていました。
それが近年、ホームページで情報を獲得した依頼人が電子メールで出演の可否を尋ねてくるようになったのです。
これなどは、「IT」の最たる例ですし、実際、この原稿にしろ、メールで送信します。
先日、NHKから出演依頼がありましたが、これもぼくのことをHPで調べて興味を持ったから、ということでした。
とんとん拍子に出演が決まり、収録の段になりました。どうしても落語のシーンが欲しいというので、それを撮ることになったのですが、面白かったのは、それを聞いた素人さんの反応でした。
つまり、放送時間は五分で、落語のシーンはせいぜい二分、ということを知らせてから、収録に取り掛かったのですが、それを聞いたあるお客さんが、「すると、二分間撮るんですね」というのです。
たしかに、放送される時間は二分間ではあっても、ご存じのように、その二分間のために、どれだけ長時間にわたってカメラを回すのかを、そのお客さんは、ご存じなかったのです。今回は、四十分ほどは撮っていたでしょうか。そんなもんでしょう。
二分間の放送のために、二分間だけ収録するというのならば、映像関係者はどれだけ楽でしょうか。
最近はテレビでNG特集を組んだバラエティがあるようですが、それでも、監督のOKが出るまで、何十回となく同じシーンを撮る、ということを知らない方がいるのですね。
時あたかも、この会報が出る頃は、アテネオリンピックの真っ最中です。
普段は、テレビをほとんど見ないぼくのような者でも、さすがにチャンネルを合わせる機会が増えると思います。
その際我々は、精進を重ねた選手のほんの一瞬にしか、立ち会うことができません。
ですから、一人でも多くの選手、ひとつでも多くの競技を見たいと思うのです。
なのにテレビは、だれもが知っているほんの一部の有名選手、あるいは、誰もが親しみを抱いている、既によく知っている競技ばかり、波状攻撃を仕掛けるように、狙って放送するのです。
ぼくなぞが言ったところでどうなるものでもありませんが、見たことも聞いたこともないような競技を、折角の機会ですから、とっくりと見たいのです。
こういうと、「やってるよ。衛星放送やデジタル放送をみてごらん」というお答えをいただきそうな気がします。
でもね、ぼくは生憎と、どちらも契約していないので受信できないのですよ。といって、オリンピックのタメに、契約しようとも思いませんが。