町田市議会議員 会派「自由民主党」/(一社)落語協会 真打 三遊亭らん丈【公式ウェブサイト】

三遊亭 らん丈

「民族芸能」vol.112らん丈の、我ら落語家群像

2004.07.01(木)

 日本において春は、年度変わりの季節ということもあり、実に様々なことを想起させてくれます。

 そんなところから芭蕉は、春を彩る代表的な花である「桜」をモチーフにして”さまざまの事おもひ出す桜かな”と詠んだのでしょう。

 ぼくにとっての春は、「身体検査」です。

 その身体検査を、今年四年ぶりに受けました。検査項目は、視力、身長、体重、血圧測定、胸部X線撮影、尿検査、問診の七種類でした。

 先ず、尿検査で驚かされました。従来の尿検査では、試験管(のようなもの)に尿を入れる、というただそれだけのもので、疑問の余地は一切ない、実にシンプルなものでしたが今回は、奇天烈な形状をしたものに、尿を流し込まなければならないのです。

 採尿のためにトイレの順番待ちをしている間、どうやって尿を流し込むのか、脳から煙が出るほど考えても埒が明きません。困惑しきった表情を浮かべるぼくを見兼ねたのでしょう。使用方法を御教示してくださった方がいて、御蔭でなんなく採尿を果たすことが出来ました。それがためにその方をノーベル化学賞受賞者よりも、ぼくは尊敬したのでした。

 次は、身長と体重測定です。ところが、身長測定の器具、身長計はあるのですが、体重計は会場のどこにも見当たりません。どうやって測るのだろうと思いながら、記入された検査記録紙に目を遣ると、既に体重が記されているではありませんか。「あれれ、いつ測ったんだろう」と、身長を測っている人を見ると、その方は身長と同時に体重も計測していました、つまり、その身長計は、体重計も兼ねていたのです。このときぼくは強く、二一世紀における科学の進歩を実感したのでした。

 何よりの圧巻は、視力検査でした。ぼくが知っている視力検査は、検査表から一定程度離れたところから、片眼ずつ隠して字あるいは記号を読み上げる、という形式でしたが今回は、ぼくの場合、眼鏡をかけていますからそのまま、顕微鏡のようなものを覗き込み、そこに記されている一部欠けた円のその向きを手元のレバーで指示し、判読不能となった時点で、白いボタンを押すと視力が確定されるという、人間の叡智の結晶のような器具と巡り会い、深い感動に身を震わせたのでした。

 今回は血液検査はありませんでしたが、ある前座くん、お世話になっている方が手術をしなければいけなくなりました。たまたま血液型が同じなので、日頃の御厚意へのせめてものご恩返しに献血をしようと申し出たところ、淋病を患っている場合、献血できないことを知らされ断念を余儀なくされました。それでも諦めずに血液型が同じ前座に援助を乞うたところ、該当の前座はすべて淋病病みだった、というのはぼくが前座の頃のお話です。