今年度、ぼくは文京学院大学生涯学習センターで、講義を勤める機会に恵まれました。
生涯学習センターという名称からもお分かりの通り、この講座の受講生は、年齢は四十歳代以上の社会人の方々ばかりです。
講義でぼくは、いくつかのアンケートを取ったところ、なるほどなぁと思うような、結果を得ることが出来ました。
“題名と内容を知っている落語”を記してくださいというアンケートでは、「寿限無」「平林」「松竹梅」「時そば」「桃太郎」「長屋の花見」などお馴染みのものから、「野ざらし」といったものまで結構バラエティに富んだネタが出てきました。
また、“うろ覚えの落語があったら教えてください”というアンケートでは、“長屋に越してきた人が、物を掛けるために打った釘の先が隣の仏壇のあるところへ出てしまった“という回答もあり、これだけ理解しているのならばとても”うろ覚え“とはいえません。なんだ知ってんじゃないの、てなもんです。ちなみにこのネタは、「粗忽の釘」ですね。
このように、受講生の落語認知度が結構高いことに、ぼくは少々驚いたのです。
なぜならば、この講座は落語を主とした講座ではなく、全三十回のうち、たまたま落語の講座をぼくが三回担当するに過ぎないというものなのにもかかわらず、これほどまでに克明に粗筋をたどれる受講生がいることに、感銘を覚えたのです。
また、“知っている落語家の亭号や屋号、芸名を知っている限り挙げてください”との設問では、結構バラエティに富んだ回答をいただきました。
なかには、「きみまろ」と記した方もいらっしゃいましたが、綾小路きみまろさんは、鈴々舎馬風一門ではありますが、もちろん落語家ではありません。
あるいは、「桂米長」と記した方もちらほら散見されましたが、これは、日本の短粒米と違って長粒米を好むタイ関係の方でしょう。
また、家号で「柳屋」と記したかたもいましたが、よほど鰹節がお好きなのでしょう。
「小三次」もいましたね。これは漢字が一字違うだけで、かなり「感じ」が異なる、というよい例になりそうな、ケアレスミスです。
なかに講師であるぼくの名前を書いてくださった方がいたのは有り難かったのですが、いかに人間はミスを犯す動物であるかを思い知らされもしたのです。つまり、ぼくの名前を「嵐上」と記しているのを発見したのです。
たしかに、これでも「らんじょう」とは読みますから、音声的には誤りではありませんが、いくらなんでも「嵐」の「上」となると、台風ということでしょうか。
台風並みのインパクトがあったと捉えればいいのでしょうが、こんな芸名だったら、台風被災地への慰問はできませんね。