【青桐集】
結局は同じセーター選ぶ父
主宰寸評: 父へのプレゼントのようだ。
一緒にデパートへ行って欲しいものを物色
していた父が選んだのは、すでに持ってい
るセーターと同じものだった。何事にも意欲
のなくなってしまった、老いた父を愛おしく
思ったことだろう。
無患子を見つつかすかな風を知る
キャッチボールやめて見上ぐる雁の列
気ぶつせいな茶会を終へて秋の雨
澄める秋心字池にて落ち合へり
【都市集】
冬ぬくし久方ぶりの今治水
いつの間にむきになりけり掃納
酉の市一円玉を拾ひ上げ
泣く子ども天の川見て笑みこぼす
渋き茶を飲みつ聞こゆる法師蝉