1、広島県における農業生産現場の状況
1)総農家数 74,032戸(2005年、2000年比−10.0%)
農家人口(販売農家)151,924戸(同上−23.5%)
うち65歳以上の比率(%)37.8(同上+3.9%)
上記のように、広島県の農業生産現場は、総農家数が減少し、農家人口も減少している一方で、高齢者が漸増傾向にある。ちなみに、高齢者の比率は、全国4位の高位に位置する。
もうひとつの特徴として、傾斜度1/20以上の水田面積が、全水田面積の3割以上を占めていることが挙げられる。これは、平地での水田が少ないことを示している。
2)広島県で全国1位の農業生産物
畜産の産出額は、全国21位。米は、全国25位。果樹は、全国20位。そのうち、レモンとネーブルオレンジが全国1位。花きは、全国35位。野菜は、全国33位。そのうち、わけぎの産出が全国1位。
このように、全般的にみると、全国的には中位の産出額となる農業生産物が多いのが、広島県における農業の特徴である。
2、広島県農業の生産構造改革
1)集落農場型農業法人(集落法人)のイメージ
農地をその所有者ごとに分散した状態にしておくのではなく、農地を面的に集積した状態に変更することによって、農民が農地の所有者であることから利用者となることへと転換させる。
そのことによって、所有地の作付け品目が分散していたものが集約され、所有地にかかわらず経営者が同一となることになり、農地の有効活用が図られた。
それが、農業生産の低コスト化をもたらし、経営の多角化が実現した。
以上をごく大まかにいえば、集落法人をつくることによって、農業の構造改革を図り、それにより、農業での就業機会を確保することと、その際、課題とされている、20〜30haの農地を一括して使用することによって、効率的な農地利用を企図した。集落法人として望まれる農地は、40haであり、それほどの面積があれば、効率的な集落法人が設立できる、とのことである。
2)集落法人とは
農業経営の基盤となる農地の確保において、集落又は一団の農用地区域を単位に、地域の合意に基づく面的な集積を行うことで、効率的かつ安定的な経営が可能となる農業生産法人。
3)集落法人の目標
二つあり、ひとつは、30ha程度の経営面積の確保を目指し、それによって、農業の担い手の育成・確保を図り、収益性を追及する態勢を整える。
もうひとつは、集落などの地区を単位として、集落機能の維持を目指し、それによって限界集落等の社会的課題の解決を図る。
4)広島県新農林水産業・農山漁村活性化行動計画
・担い手中心型の生産構造への転換…集落法人の育成、担い手中心の産地育成
・新たな担い手の確保…新規就農者の確保、農業外企業の参入促進
・稲作中心から園芸作物への転換…園芸作物の生産拡大
3、集落法人の育成手法
1)平成20年度集落法人育成の取組
集落点検の実施による推進対象地区等の増大を図り、集落法人化に係る推進対象地区及び重点地区を増大させる。その推進対象地区は、1000地区超を目指し、重点地区は300地区超を目標とする。
そのために、設立支援アドバイザーとして延べ78人。広島県集落法人連絡協議会の各支部の講師として延べ46人。合計延べ124人を派遣する。
経営開始までに集積した経営面積に応じて、30,000円/10aを交付する。
2)損益計算書
集落への還元額は、12,914千円。営業利益は、−3,857千円となっているが、公的給付金に代表される営業外収益で補填され、765千円の経常利益を出している。
円/10ha当たりの、個別経営平均と集落法人平均との比較(平成18年度)によれば、個別経営平均の農業所得は、5,895円であるが、集落法人平均は、50,264円であり、約8.5倍にも達する。
4、農業情報ローカルネットワーク
これは、広島県農林水産局農水産振興部農業技術課によるもので、平成14年度から運用が開始されたHPである。⇒https://www.f-net.naka.hiroshima.jp/
その目的は、県内の農業者、消費者、市町・JA等を対象とし、農業現場の動き、農作物の栽培技術、経営手法、試験研究成果、病害虫発生、気象などの情報ニーズに呼応した農業情報を迅速に提供することと、農業情報をシステム化及び共有化することで、農業振興業務の効率化を促進し、県民サービスの向上を図ることにある。
月平均約4万件のアクセス数があるものの、アクセス数が伸び悩んでいるために、コンテンツの固定化と情報掲載数の増加を図ることを目途に改修を実施することとしている。