【箇所】早稲田大学大学院 社会科学研究科 政策科学論専攻
【科目】現代人権論Ⅱ【開講学期】2007年度 後期[2単位]
【担当】後藤 光男 教授〈早稲田大学 社会科学総合学術院〉
【表題】『一般職公務員に対する分限処分』
【1】一般職公務員とは
国家公務員と地方公務員を問わず公務員における一般職とは、国家公務員法第2条2、地方公務員法第3条2による、国家公務員又は地方公務員の「職」のうち、法律に制限的に列挙される特別職に属する職以外の一切の通常の職をいう。
特別職には、内閣総理大臣、国務大臣、裁判官及びその他の裁判所職員、国会議員、地方公共団体の長、就任について公選又は地方公共団体の議会の選挙、議決若しくは同意によることを必要とする職等の職が挙げられる。
【2】憲法にみる公務員の選定・罷免の逐条解釈
憲法第15条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。
本条は、国民主権の理念のもとにおける公務員の本質を明らかにし、公務員の選挙についての大原則を定める。
国民主権的民主制の統治機構を規定する憲法は、その前文で以下のように記している。「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する」ものである。
したがって、天皇主権を規定した明治憲法における官吏の地位(大日本帝国憲法第10条*)と異なり、現憲法下における公務員の地位は、今や「国民の代表者」として、究極的には国民の意思に基づくものでなければならず、また、その性格は、国民の公務員として国民「全体の奉仕者」でなければならない。本条1項及び2項は、公務員の地位についてのこの原則を明記したものである。(室井力・後掲書p.151)
こうして、本条1項は、主権者である国民が、公務員の任免について根源的な権能をもつことは、民主政治における国民参政の第一原理であることを宣言したものである。(伊藤満・後掲書p.131)
〔1〕「公務員」とは、ここでは、広義で国または公共団体の公務に参与することを職務とする者の総称である。国家公務員法(以下、「国公法」という)および地方公務員法(以下、「地公法」という)にいう一般職および特別職の国家公務員および地方公務員はもちろん、認可法人である日本銀行の職員など準公務員といわれる者や、さらに、国会議員・地方議会の議員をも含むと解すべきであろう。狭義では、これらより狭く、各法律によってちがうが、特に、国会議員および地方議員を除く例である。
〔2〕「選定」とは、ある人を一定の地位(公務員の地位)につける行為をいう。選任というのも同じ意味である。
ここでの「選定」は、任命と選挙に大別される。任命は、単一の意志によって選定することである。たとえば、内閣総理大臣が国務大臣を任命することである(68条1項)。しかし選挙は、多数(の選挙人)の意思の合致によって選定することである。選挙人が両議院の議員を選挙し(43条以下)、地方公共団体の住民がその長や、その議会の議員を選挙する(93条)ことを指す。
したがって、すべて合議体による選定は、選挙の性質を有する。憲法第58条第1項は、議院がその役員を「選任」するというが、この「選任」は選挙にほかならない。国会法では、これを選挙と呼んでいる(国会法25条・27条等)。この意味からいうと、内閣や、最高裁判所も、合議体である以上、内閣の行う最高裁判所長官の指名(6条2項)や、裁判官の任命(79条1項・80条1項)、また最高裁判所が行う下級裁判所の裁判官の指名(80条1項)も、選挙の性質を備えているといえる。しかし、内閣とか、裁判所とかいうような少数の成員から成る合議体による選定は、ふつうには選挙とはいわないものと考えられる。
〔3〕「罷免」とは、公務員に対して、その意志にかかわらず、一方的にその公務員たる地位を奪うことをいう。
国民が投票により、直接に公務員を罷免することをひろくrecall(リコール)という。地方自治法の定める議員や長に対する解職の請求にもとづく投票は、すなわち、リコールである。
最高裁判所裁判官に対する国民の審査も、その性格を有する。
ただし、上記公務員の選定・罷免権が保障されているとはいえ、国会議員に対する国民の罷免権は、否定される。
なぜならば、日本国憲法第51条*で、国会議員の免責特権が認められているからである。
〔4〕「国民固有の権利」とは、国民が当然にもっているとされる権利、したがって、他人にゆずりわたすことのできない権利の意である。(英訳では、inalienable rightといっている)。
〔5〕第3項は、あらゆる公務員の終局的任免権が国民にあるという国民主権の原理を表明したもので、かならずしも、すべての公務員を国民が直接に選定し、罷免すべきだとの意味を有するものではない。
したがって、本項の趣旨は、すべての公務員の選定および罷免は、直接または間接に、主権者である国民の意志に依存するように、その手続が定められなくてはならないということである。(宮澤俊義、芦部信喜・後掲書p.219)
つまり公務員は、国民代表の府たる国会の制定する法律にもとづいて選定罷免される。(伊藤満・後掲書p.131)
これは、公務員の地位が、明治憲法下の天皇の官吏から現行憲法下の国民の公務員へと転換したことを理念的に表明したものであって、公務員のすべてが国民によって直接に選定・罷免されることを必ずしも意味せず、その地位が何らかの形で究極的に国民の意思に基づくことを要求するに過ぎない。
ここで採り上げる一般職行政公務員については、一般に、国民の意思とみなされる国会の制定する法律に委ねられ、選定罷免される。
法律によってとくに直接の罷免の請求が認められているものとしては、先述のリコール制度を利用したうえでの、地方公共団体の長及び副知事・助役その他の役員(出納長、収入役、選挙管理委員、監査委員、公安委員)ならびに地方議会の議員がある。
【3】公務員の人権
公務員関係においては、政治活動の自由の制限(国公法102条、人事院規則14-7、地公法36条等)や労働基本権の制限(国公法98条、地公法37条、特定独立行政法人等の労働関係に関する法律17条等)が規定されている。こうした人権制約の根拠や限界についてはどのように考えるべきであろうか。
まず、公務員の人権の制約根拠については、憲法が公務員関係という特別の法律関係の存在とその自律性を憲法的秩序の構成要素として認めていること(15条・73条4号)に求める見解(憲法秩序構成要素説)が妥当である。(高作正博・後掲書・p.48)
公務員の人権に対する制約は、公務員関係の存立と自律性を維持するために必要かつ合理的な最小限度のものでなければならない。政党政治のもとでは、行政の中立性が保たれて初めて公務員関係の自律性が確保され、行政の継続性・安定性が維持されるといえるため、公務員の政治活動の自由及び労働基本権に対する制限は、「行政の中立性の維持」という目的を達成するため合理的な必要最小限度の規制に限られるということになる。
近時の判例を見た場合、労働基本権の一律かつ全面的な制限も合憲であると判断し(全農林警職法事件に関する最大判。同様のものとして岩手教組学テ事件に関する最大判、全逓名古屋中郵事件に関する最大判)、政治活動の自由の制限について、禁止の目的、目的と禁止される政治的行為との関連性、政治的行為の禁止により得られる利益と失われる利益との均衡という三点から合憲性を判断するいわゆる合理的関連性の基準を援用し現行法の規制を合憲として(猿払事件に関する最大判)、公務員の人権保障に消極的な傾向を示している。
【4】判例にみる一般職公務員に対する分限処分
最高裁判例昭和48年9月14日判決(民集27巻8号p.925、『行政判例百選1「第5版」』上原克之「公務員の分限処分と裁量審査」pp.156〜7)
〈事実の概要〉
X(原告・被控訴人・被上告人)は、昭和24年4月30日、Y(県教育委員会−被告・控訴人・上告人)から、公立学校校長に任命され、小学校校長の職にあったが、昭和34年、地方公務員法(以下「地公法」という)に基づきYから公立学校教諭に降任するとの分限処分を受けた。その理由は、1)Xが校長を勤める小学校の廃校に伴う学校統合運動に積極的に参加したこと2)教員の勤務評定に関連して、職務命令違反や提出遅延があった3)町や町教委の同意なく予算の事前執行を行なった4)その他、日常行動に関連して、校長としての適格性を欠く言動・行動があったこととしている。これに対して、Xは、1)手続的瑕疵2)手続的不正3)町教育長らによる報復的手段4)「適格性を欠く」という要件事実の不在5)分限権の濫用6)不当労働行為などの諸点を違法事由として本件分限降任処分の取消しを求めて出訴した。
第1審判決は、本件降任処分を取消した。
第2審判決も第1審判決をほぼ全面的に支持し、控訴を棄却した。
それに対して、Yは上告した。
〈判旨〉
破棄差戻し。
(1)地公法28条に基づく「分限処分については、任命権者にある程度裁量権は認められるけれども、もとよりその純然たる自由裁量に委ねられているものではなく、分限処分の……目的と関係のない目的や動機に基づいて分限処分をすることが許されないのはもちろん、処分事由の有無の判断についても恣意にわたることを許されず、考慮すべき事項を考慮せず、考慮すべきでない事項を考慮して判断するとか、また、その判断が合理性をもつ判断として許容される限度を超えた不当なものであるときは、裁量権の行使を誤った違法のものであることを免れないというべきである。」
(2)地公法28条1項3号「にいう『その職に必要な適格性を欠く場合』とは、当該職員の簡単に矯正することのできない持続性を有する資質、能力、性格等に基因してその職務の円滑な遂行に支障があり、または支障を生ずる高度の蓋然性が認められる場合をいうものと解される」。後略
(3)「適格性の有無の判断であっても、分限処分が降任である場合と免職である場合とでは、前者がその職員が現に就いている特定の職についての適格性であるのに対し、後者の場合は、現に就いている職に限らず、転職の可能な他の職をも含めてこれらすべての職についての適格性である点において適格性の内容要素に相違があるのみならず、その結果においても、降任の場合は単に下位の職に降るにとどまるのに対し、免職の場合には公務員としての地位を失うという重大な結果になる点において大きな差異があることを考えれば、免職の場合における適格性の有無の判断については、特に厳密、慎重であることが要求されるのに対し、降任の場合における適格性の有無については、公務の能率の維持およびその適正な運営の確保の目的に照らして裁量的判断を加える余地を比較的広く認めても差支えないものと解される。」
(4)「原審の判断には、教育委員会が本件降任処分の事由の存否について上記のような裁量的判断権を有することを無視したか、ないしは裁判所のなすべき審査判断の範囲を超えて処分庁の裁量の当否に立ち入った違法があるといわなければならない。」
〈解説〉
1、公務員の分限処分は、主として公務員がその職務上の義務を十分に果たし得ない場合に、公務の能率を維持またはその適正な運営の確保のために、一定の事由がある場合に職員の意に反する不利益な身分上の変動(降給・休職・降任・免職)をもたらす処分である。
国公法78条*並びに地公法28条*は、降任・免職について、(1)勤務実績が良くない場合、(2)心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合、(3)その他その職務に必要な適格性を欠く場合、職制もしくは定員の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合に職員を降任又は免職することができることを定めている。
その際、分限処分及び懲戒処分がなされるにあっては、公正でなければならない(国公法74条1項、地公法27条1項)とされ、また、職員は、法律の定める事由によらなければ、その意に反して降任・休職・免職されない、身分保障の原則の下に置かれている(国公法75条1項、地公法27条2項)。
懲戒処分の際に配慮されなければならないのは、公務員の義務違反に対して、その使用者である国家や地方公共団体が公務員法上の秩序を維持するため、使用者として行う制裁(鵜飼信成・後掲書p.288)であることと趣旨を異にするものであるということである。
2、第1審及び原審は、懲戒処分と分限処分の関係について、懲戒処分と分限処分が全く目的を異にする制度であり、それぞれ異なった観点から評価されるべきものであることを前提として、法が降任・免職分限処分の該当事由としている職務の「適格性」の判断を総合的な見地から考察して、地公法28条1項1号・2号と同程度であると認められる場合に地公法28条1項3号に規定する「適格性」の欠如に該当し、単に懲戒処分の対象となりうる事実があったとしてもそれにより直ちに職務の「適格性」の欠如が認められるものではないとしている。
これに対して、本判決では、懲戒処分の対象となりうる事実が職務の「適格性」の欠如に関係する可能性があり、このような事実の評価について任命権者の判断に広い裁量を認めるべきであるとしている。
この点においては、本判決が裁量性を幅広く認める点には疑問が残るとする見解(上原克之・上掲書p.157)もある。
3、本判決では、分限降任処分についての判断であるが、判旨(3)で示しているように、その前提として、分限降任処分と分限免職処分における裁量の範囲につき、分限降任処分における裁量を広く認める立場をとっている。
この点について、学説は、裁判所により厳格な比例原則*審査がなされると、比例原則違反と判断された場合、裁判所が適正な部分も含めて処分全体を取り消すことになり相手方公務員は本来受けるべき適正な処分まで免れることが生じうること、人事当局者が裁判所で処分が取り消されるのを恐れて本来なすべきよりも軽い処分をすることになることなどを根拠に、免職処分と免職に至らない処分との間に比例原則審査の差異を設けるべきであるとする見解がある(阿部泰隆・後掲書p.180)。
比例原則違反を理由とする処分の取消判決の事後措置も問題である。すなわち、裁判所は行政不服審査庁と異なり処分の一部修正権を有しないので、処分が過重な場合は適正な部分も含めてすべて取り消すことになる。行政庁はあらためて適正な処分をすべき筋であるが、いったん取り消されると、それは実際上困難であり、相手方公務員は本来受けるべき適正な処分まで免れうる不都合を生じやすい。
これに対して、実定法上、免職処分と他の処分が法的に区別して取り扱われていないこと、裁量濫用の法理が両者に共通して適用されていること、考慮要素が増えることと裁量の幅が広くなることは論理的に無関係であることなどを根拠に分限降任処分と分限免職処分の裁量の範囲について区別することを疑問視する見解もある(田村悦一・後掲書p.127)。
【5】まとめ
以上のように法律上は、一般職公務員は、国家公務員であれ地方公務員であれ、“勤務実績が良(よ)くない”場合には、免職される場合があるが、それは、事実に照らせば、実行されていない。
市民からみて、“勤務実績が良(よ)くない”職員に、適切な分限処分を与えることが出来るように制度を整えれば、市民の公共の福祉をより伸長させることに資することになり、ひいてはよりよい公共空間を創出させることができるものと筆者は考えた。
もうひとつ、人権の観点から指摘したいのが、一般職公務員におけるメンタル・ヘルス・マネジメントの重要性である。昨今特に、バッシングともいうべき市民からの批判が、公務員に向かっている。そのために、「心の病」を個人的な性格や疾病としてとらえるのではなく、環境との相互作用として把握する必要がある。それには、「心の病」に対して、全庁的に取り組むことが必要とされ、「採用→育成→配置→評価」という人事労務施策の枠組みのなかで、戦略的なアプローチをすることが不可欠である。
しかし、それでも尚、対応できない場合には、根本的な解決策として、国公法78条並びに地公法28条(2)心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合を適用して、免職された方が当事者は、治療に専念できるようになり、また、完治した後は、新たな職業に就くことで、再発の危険が回避できるものと考える。
【関係法令一覧】
大日本帝国憲法
第10条 天皇ハ行政各部ノ官制及文武官ノ俸給ヲ定メ及文武官ヲ任免ス但シ此ノ憲法又ハ他ノ法律ニ特例ヲ掲ケタルモノハ各々其ノ条項ニ依ル
日本国憲法
第51条 両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。
第73条 4 法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。
国公法第2条2、第74条1項、第75条1項、第78条
第2条 2 一般職は、特別職に属する職以外の国家公務員の一切の職を包含する。
第74条 すべての職員の分限、懲戒及び保障については、公正でなければならない。
第75条 職員は、法律又は人事院規則に定める事由による場合でなければ、その意に反して、降任され、休職され、又は免職されることはない。
第78条 職員が、左の各号の一に該当する場合においては、人事院規則の定めるところにより、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。
1.勤務実績がよくない場合
2.心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合
3.その他その官職に必要な適格性を欠く場合
4.官制若しくは定員の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合
第98条 2 職員は、政府が代表する使用者としての公衆に対して同盟罷業、怠業その他の争議行為をなし、又は政府の活動能率を低下させる怠業的行為をしてはならない。又、何人も、このような違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおつてはならない。
第102条 職員は、政党又は政治的目的のために、寄付金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。
2 職員は、公選による公職の候補者となることができない。
3 職員は、政党その他の政治的団体の役員、政治的顧問、その他これらと同様な役割をもつ構成員となることができない。
地公法第3条2、第27条1項2項、第28条
第3条 2 一般職は、特別職に属する職以外の一切の職とする。
第27条 すべて職員の分限及び懲戒については、公正でなければならない。
2 職員は、この法律で定める事由による場合でなければ、その意に反して、降任され、若しくは免職されず、この法律又は条例で定める事由による場合でなければ、その意に反して、休職されず、又、条例で定める事由による場合でなければ、その意に反して降給されることがない。
第28条 職員が、左の各号の一に該当する場合においては、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。
1.勤務実績が良くない場合
2.心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合
3.前2号に規定する場合の外、その職に必要な適格性を欠く場合
4.職制若しくは定数の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合
第36条 職員は、政党その他の政治的団体の結成に関与し、若しくはこれらの団体の役員となつてはならず、又はこれらの団体の構成員となるように、若しくはならないように勧誘運動をしてはならない。
第37条 職員は、地方公共団体の機関が代表する使用者としての住民に対して同盟罷業、怠業その他の争議行為をし、又は地方公共団体の機関の活動能率を低下させる怠業的行為をしてはならない。又、何人も、このような違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおつてはならない。
【参考文献】
・有倉遼吉編『判例コンメンタール1 憲法?』(三省堂、1977年)第15条担当 室井力
・伊藤満『逐条憲法特講[上]』(有信堂、1975年)
・宮澤俊義著・芦部信喜補訂『全訂 日本国憲法』(日本評論社、1978 年第2版)
・後藤光男・猪股弘貴編著『憲法』(敬文堂、1999年)第3章人権総論 高作正博
・『行政判例百選1「第5版」』(有斐閣、2006年)
・阿部泰隆『行政裁量と行政救済』(三省堂、1987年)
*比例原則、上掲書p.178
比例原則とは分限事由・懲戒事由の存する場合にいかなる種類の処分を選択すべきかについて、事由と処分の間の均衡を要求する原則である。
上掲書p.180
免職処分と免職に至らない他の処分との間を区別して、比例原則は主としては前者にのみ適用するという取扱いが合理的と思う。
・田村悦一『行政訴訟における国民の権利保護』(有斐閣、1975年)
上掲書p.127
瑕疵なき裁量行使を請求する権利が手続的にのみ構成されるのと同様に、行政手続の内容が多少とも裁量に委ねられている領域では、その手続の公正を要求するという具体的請求権はない。ここでは、公正な手続の内容自体を争うというよりは、むしろその行政の権限行使の方法にむけられたものであるに過ぎない。
・鵜飼信成『公務員法』〔新版〕(有斐閣、1986年)
上掲書p.288
懲戒処分は、公務員の義務違反に対して、その使用者である国家が、公務員法上の秩序を維持するため、使用者として行なう制裁である。(中略)
これらの組織体内部の懲戒は、同一の、あるいは同種類ではあるけれども、一層重大な、違法行為に対する、刑罰の制裁とは区別されなければならぬ。