早稲田大学大学院 社会科学研究科紀要『ソシオ サイエンス』
Waseda Review of Socio-Science(第15号 2009年)232頁掲載{修士論文要旨}(字数制限、約750字)
【論文題目】『公務員の身分保障』に関する一考察~「分限処分」について~
【指導教員=修士論文主査】後藤 光男 教授
修士論文提出予定届提出締切日:2008年2月4日
修士論文計画書(案)提出日:2008年4月19日
修士論文計画書提出日:2008年5月7日
修士論文研究発表会実施日:2008年10月25日
修士論文・要旨提出締切日:2009年1月9日
修士論文最終試験(口頭試問)実施日:2009年1月24日
【主査】後藤 光男 教授[専攻 行政法、憲法、人権法]
【副査】久塚 純一 教授[専攻 社会保障法、福祉関係論]
【副査】清水 敏 教授[専攻 労働法]
【学位】「修士(学術)」M.A. in Social Sciences
【修了に必要な単位数32】修得した単位数42
【必修科目】現代人権論研究演習Ⅰ、Ⅱ[各4単位]〔2007年度&2008年度履修〕
要旨
わが国の一般職の公務員には身分保障があるため、私企業労働者と比較した場合には、解雇されにくいと一般的にいわれている。それは、たとえば下記のような新聞記事によってもその一端をみることができる。
「逆風満帆」[朝日新聞,2008.6.14朝刊]に、『公務員は意に反して辞めさせられることはない』との記述があり、作家で精神科医のなだいなだ氏は、下記のコメントを寄せていた。『社会全体がぎすぎすした雰囲気になる中で、安定して恵まれた地位にいる公務員』[朝日新聞,2008.6.22朝刊、千葉版]
公務員を律する国家公務員法、地方公務員法では、公務員の身分に関する分限を扱った条文においては、次のように記されている。
国家公務員法78条 職員が、左の各号の一に該当する場合においては、人事院規則の定めるところにより、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。
一 勤務実績がよくない場合
二 心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合
三 その他その官職に必要な適格性を欠く場合
四 官制若しくは定員の改廃又は減少により廃職又は過員を生じた場合
(地方公務員法28条は、文言に異同はあるものの、同条と同趣旨のものである)
上記の条文を読む限りでは、先ほどの新聞記事とは齟齬が生じているようにも考えられるが、上記公務員法では、どのような場合に、公務員に対して分限免職処分を行なうのかを、判例をもとに考える。
それによって、公務員法は、公務員の身分保障をどのように規定してきたのかを明確にさせたい。
併せて、公務員の任用と、それが公務員の身分保障に与える影響に関しても考えを進めることによって、公務員の身分が保障されるのであれば、なぜ保障しなければならないのかを本論文において考える。