平成23(2011)年度 「一橋大学国際・公共政策大学院 社会人特別選考 第2次試験(小論文) 問題 」〔公共法政プログラム〕(試験時間90分)
国家公務員のいわゆる労働基本権(「団結権」・「団体交渉権」・「争議権」)の制限については、従来より様々な意見があるが、近時の国家公務員制度改革をめぐる議論の中でも、非現業職員について「団体交渉権」に含まれる団体協約を締結する権利が制限されていることに関し、検討が行われてきたところである。
たとえば、政府の行政改革推進本部専門調査会による「公務員の労働基本権のあり方について(報告)」(平成19年10月19日)は、「責任ある労使関係を構築するためには、透明性の高い労使間の交渉に基づき、労使が自律的に勤務条件を決定するシステムへの変革を行わなければならない。しかし、現行のシステムは、非現業職員について、その協約締結権を制約し、一方で使用者を、基本権制約の代償措置である第三者機関の勧告により拘束する。このように労使双方の権限を制約するシステムでは、労使による自律的な決定は望めない。」とし、一定の非現業職員について、「協約締結権を新たに付与するとともに第三者機関の勧告制度を廃止して、労使双方の権限の制約を取り払い、使用者が主体的に組織パフォーマンス向上の観点から勤務条件を考え、職員の意見を聴いて決定できる機動的かつ柔軟なシステムを確立すべきである。このシステムの転換を契機として、労使双方が責任感を持ってそれぞれの役割を果たし、職員の能力を最大限に活かす勤務条件が決定・運用されることを通じて、公務の能率の向上、コスト意識の徹底、行政の諸課題に対する対応能力の向上といった効果が期待できる。」と述べている。また、国家公務員制度改革基本法(平成二十年六月十三日法律第六十八号)第12条は、「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする。」としている。
しかし、非現業職員に対し団体協約を締結する権利を付与することについては、どのような制度にすべきかなど課題も多いと考えられる。たとえば、政府の国家公務員制度改革推進本部労使関係制度検討委員会による「自律的労使関係制度の措置に向けて」(平成21年12月15日)は、「制度骨格の議論に当たっては、労使の合意を基礎としつつ勤務条件を決定する仕組みを検討することが必要と考える。」と述べたうえで、たとえば次の1や2などの制度骨格に係る論点を挙げ、さまざまな検討を行っている。
1 「議会制民主主義、財政民主主義等との関係で勤務条件に関する国会の法律による関与をどのように考えるか。」
2「市場の抑制力が働かないこと、究極の使用者が国民であることを前提とした場合、「労使」(職員団体・当局間)で合意されたものが「適正な勤務条件」であることをチェックする措置の必要性についてどう考えるか。」
国家公務員の非現業職員に対し団体協約を締結する権利を付与することについて、1200字以内で、少なくとも1、2の論点に関し検討してその結果を説明するとともにあなたの考えを述べなさい。