2014年4月19日から21日にかけて実施された、町田市議会総務常任委員会の行政視察報告書を掲出します。
【視察先】大阪府高槻市、奈良市、滋賀県草津市
【調査事項】1,広報・広聴について、2,産業及び観光の振興について、3,長期計画について
【視察所感】
調査事項:高槻市、広報・広聴について
視察内容:定住促進プロモーション事業「どっちもたかつきキャンペーン」について
1、本事業取り組みの背景
(1)高槻市の総人口は、平成15年度に増加に転じて以降、平成18年度まではそのまま増加を続けていたが、平成19年度以降は逆に減少しており、平成24年度は前年度比808人減少した。
(2)生産年齢人口は、平成12年度には全人口比71.6%であったものが、平成24年度には61.5%に減少し、数でいえば約4万人減っている。
(3)社会動態では、平成19年度から転出数が転入数を上回る転出超過となっている。
(4)客観的な当市の評価
リクルートSUUMOなんでもランキング2012年関西編における高槻市の順位
住んでみて良かった街ランキング 総合1位
買い物・生活に便利な街ランキング 総合1位
交通アクセスの良い街ランキング 総合1位
子育て環境の良い街ランキング 総合1位
人情味あふれる親しみやすい街ランキング 総合1位
ところが、同ランキングで、住みたい街ランキングでは、高槻市は11位にある。
このギャップの理由はどこにあるのか、街の魅力が知られていないからではないのかと反省し、折角の施策も知られていなければ、存在しないのと同じなので、従来の発信方法だけではないものを模索するようになる。
2、第一次高槻営業戦略
そこで、平成24年4月に「営業課」を高槻市に新設し、高槻市の魅力を市内外に発信するための指針「第一次高槻営業戦略」を策定した。
同計画の期間、目標、ターゲットは下記のとおり。
期間:平成24〜26年度(3年間)
目標:転入者の増加
ターゲット:移動距離1時間圏内の働く世代(概ね20〜40歳代)
基本方針:定住人口の増加に向けて、高槻市を選択してもらえるように本市イメージを高めるためのプロモーション活動を推進する。そして、その実現のための具体的な方法論、技術論を確立する。
基本戦略
戦略1、情報発信力の全庁的な底上げを図る。
戦略2、企業・団体等とのタイアップにより、最小の経費で効果的かつ広域的な周知を図る。
戦略3、情報ツールへの積極的な「デザイン」の導入により、訴求力の向上を図る。
3、高槻市のキャッチフレーズ「どっちもたかつき」
街に賑わいがあり、自然の豊かさもあり、毎日の通勤も便利で、子育て環境も良い、古き良き文化も残る、そんな高槻市の二面性、多様性の魅力をひとことで表現する言葉を探したところ、あれもこれもが叶う街、「どっちもたかつき」に決定。
「都市も、自然も」「車も、電車も」「医療も、子育ても」というように、対比させることによる表現化を図る。
平成24年度
1、阪急電鉄車中中吊り広告掲出「どっちもたかつきトレイン」
2、特設サイト「たかつきウェルカムサイト」の開設
3、「たかつきウェルカムガイド」の制作
平成25年度
1、出版社との紙面連動企画
2、定住促進プロモーションムービー
3、「たかつきウェルカムサイト」の更新
これらの施策が成功をおさめたためか、SUUMO関西版住みたい街ランキング
住みたい街(駅)ファミリー部門2013年14位⇒2014年8位
住みたい行政市区ファミリー部門2013年20位⇒2014年7位
4、今後の課題
これらの施策を実施してもなお、高槻市への流入人口が増加していることが確認できていない。したがって、実を結ぶ施策の実施が望まれる。
調査事項:奈良市、産業及び観光の振興について
視察内容:もちいど商店街の「もちいどの夢CUBE」を中心に商店街活性化について
1、奈良市の起業家支援の目的及び事業概要
奈良の地域特性を活かしたビジネスの創業支援、特に若者による新規創業をメインに広く支援し、新たな雇用を創出することにより、内発的な地域の活性化を図ることがその目的である。
1)事業概要
平成24年度から起業風土の醸成として事業を実施。起業家の発掘と育成を行う。学生等と起業家との交流会やインターンシップにより、起業に興味のある者の掘り起こし、底上げを行う。また、奈良市商業振興施設(きらっ都・奈良)で起業家を育成し、将来的にはここを卒業した起業家が市内の空き店舗に入居することにより、地域の活性化を図る。また、UIターン等により奈良で起業する若者を輩出させる。
2)創業支援施設きらっ都・奈良
施設を通じて起業家を育成・支援し、将来的に奈良市内の空き店舗への入居を図るなど、内発的な地域の活性化につなげることを目的としている。
管理委託:株式会社まちづくり奈良
資本金:14,100千円
設立:平成23年12月26日
株主構成:奈良市(42.55%)、地元9商店街(46.10%)、商工会議所(7.09%)、南都銀行(4.26%)
サポート体制
中小企業診断士が入居しているため、定期的に無料経営相談会を実施し、経営相談などサポート体制をとっている。
また、身近な存在として夢キューブ卒業生による相談・ケアも随時受けることができる。
定期的なテナント会実施し、そこで、改善点の把握、セールの実施、照明の変更、入り口の飾り付け、レイアウトなど随時各店で話し合いをし、問題点を館全体で検討・対策を考えるようにしている。
広告等(新聞への広告、地域誌、近隣マップ等)への掲載をおこなっている。
2、創業支援策の紹介
1)起業家発掘事業:ビジネスカフェ
平成24年度
第2回ビジネスカフェ
ゲスト:奈良市長
第4回ビジネスカフェ
ゲスト:オーキッドコンサルティング
平成25年度
第2回ビジネスカフェ 学生起業家
ゲスト:奈良女子大学学生
テーマ:奈良で学生起業−リユース瓶を使った大和茶の販売
第3回ビジネスカフェ Iターン起業家
ゲスト:イタリアンレストランAMRITオーナー
テーマ:奈良で起業するとは?
2)起業家発掘事業:実践型長期インターンシップ
平成25年度は夏期4名(中央大学、学習院大学、同志社大学、大阪経済大学)、春期7名(京都大学、筑波大学、大阪府立大学、横浜国立大学、立命館アジア太平洋大学、創価大学)の学生が奈良に4週間滞在して参加。
このインターンシップの特徴は、1、4週間以上の長期滞在。
2、企業経営者の右腕となる。3、1・2年生の参加も大歓迎。⇒企業側も意識改革となるため、引き続き学生の受け入れを希望する傾向にある。
実際例として、ホテルサンルート奈良での「歴史を紡ぐ、奈良のホテルロビーの空間づくりプロジェクト」や、株式会社柿の葉ずし総本家平宗での「つつむという優しい文化『柿の葉ずし』が伝える日本のこころ」のプロジェクトに参加した。
3)ビジネスプランコンテスト−好きな街で仕事を創るin 奈良−
平成24年度実績
・Webデザイナー(男性・Uターン起業・東京から夫婦で移住)
・Webデザイナー(女性・Iターン起業・東京から単身移住)
・書道家(女性・Iターン起業準備中・結婚をきっかけに)
この他にも準備者が出ている。
平成25年度は、下記のスケジュールでビジネスプランコンテストが実施された。
1、募集(10月下旬−12月上旬:企業編5名、課題解決編6名)
※応募者:起業編17名、課題解決編12名)
2、選抜(12月中旬:起業編5名、課題解決編8名の参加が決定)
3、奈良市内のフィールドワーク(1回目:1月11日−13日(2泊3日))
4、中間講座(1月19日東京)
5、奈良市内のフィールドワーク(2回目:2月15日−17日(2泊3日))
6、最終報告会(3月8日奈良市)
あわせて、奈良で「新たな仕事」を創りだすための手法と感性を磨く短期集中実践プログラムも実施している。
そこでは、多くの先輩起業家や自体対等との意見交換を通じて、奈良という地域に貢献していく事業プランを試し、創業への第一歩を踏み出していけるようにしている。
また、課題解決編では、平成25年度から、奈良市の中小企業地場産業経営者から自社の事業を通じた地域の課題解決または次の一手への挑戦に必要な「お題」をいただくようになった。
4)起業家育成事業
ここでは、デザインセミナー、無料経営相談会、商業力アップセミナーを実施しており、平成25年度実績で全28回開催し、のべ約300名が参加した。なお、その講座受講料はすべて無料だった。
5)創業支援資金(平成25年1月15日申請受付開始)
同支援資金の概要は、下記のとおり。
利率:年1.25%
融資限度額:1,000万円
融資期間:設備資金5年以内、運転資金4年以内
信用保証料:うち70%を市が負担
資格要件:市内居住or市内事務所or市内での事業予定者
現在の申請状況
平成24年度 4件申請(うち1件取り消し)
平成25年度 2件申請
6)スタートアップ都市推進協議会
起業や新たな事業などのスタートアップ都市づくりに先進的に取り組む自治体が、地域の個性を活かしたロールモデルとなり、日本全体がチャレンジすることで評価される国に変えていくことを目指すため、平成25年12月22日に設立。参加自治体は次の各都市。三重県、広島県、佐賀県、福岡市、千葉市、浜松市、横須賀市、奈良市。
そこでは、小中学生向けチャレンジマインド醸成教育やマッチング事業をおこなった。
3、所感
官ではうまくできないことも、民でならば軽々とできてしまうことがあり、それを支援することは極めて重要である。
調査事項:草津市、長期計画について
視察内容:草津未来研究所について
1、草津未来研究所の概要
1)同研究所設立経緯
1994年に立命館大学BKC(びわこ・くさつキャンパス)が草津市内に開学したことに伴い、第4次草津市総合計画(1999年−2010年)において、立命館大学の人的資源を活用することを志向する。そこで、(仮称)草津まちづくり研究所の設置が盛り込まれる。
2003年には、立命館大学と包括協定締結。2004年には、第1次行政システム改革宣言がなされ、市政研究所(仮称)まちづくり研究所の設置が提案される。
2008年には橋川市長が就任し、2009年には、準備室が設置され、2010年には、草津未来研究所が設置された。
同研究所では、地方政府としての「草津」が志向された。つまり、1、地方分権改革の進展と「地方政府」に向けた動きに対応し、2、地方政府としての「草津」へ(政策形成能力の向上、1)調査研究活動、2)人材育成活動)3、地方政府に相応しい「シンクタンク」の必要性を課題視している。
同研究所の必要性として、下記の4項目が挙げられている。
1、地域の課題を解決するための実践的かつ戦略的な政策への取り組み
2、地方分権の推進による地方政府の構築
3、立命館大学の知の集積との連携
4、第5次総合計画実現への支援
同研究所の目的は、草津市の未来を見据えた創造力ある政策を提案し、草津市の政策審議機能の充実に寄与することである。
同研究所の活動は、下記の2項目である。
1、調査研究活動
草津市の政策課題を分析し、課題解決を目指すような政策を生み出す。
2、人材育成活動
草津市の未来を担うため、職員課と連携し、大学の人材育成プログラムや、調査研究活動を通して人材育成を図る。
草津未来研究所の活動イメージ
トレーニング機能・プラットフォーム機能を兼ね備え、そこにデータバンク機能、シンクタンク機能、コンサルティング機能を付加する。それらが相俟って、業務の基礎資料としての活用、事業立案の根拠としての活用、事業の推進を図る。
2、草津未来研究所の平成25年度事業内容
シンクタンク機能
【調査研究】
1、6次産業化に関する調査研究−流通・消費の視点から−
2、草津市の医療福祉のあり方に関する調査研究−質の高い生活を支える医療と介護との連携のあり方を探る−
3、広域行政に関する調査研究−草津市の今後の方向性について−
【都市再生懇話会】
第1回「食と農における産学官連携」話題提供者:松原豊彦(立命館大学経済学部長)
第2回「公共経営のイノベーション−マネジメント(経営)からガバナンス(協治)の時代へ−」話題提供者:石原俊彦(関西学院大学教授)
【データバンク機能】
1、データベースによる各種庁内データの集積
・市政データ(70件:累計388件)
・文献データ(148件:累計938件)
2、政策情報の整備
・国勢調査の結果に基づく市域全体の推計人口の計算
・住民基本台帳に基づく学区別の推計人口の計算
・ 年齢3区分別の割合を地図上に表示することを試行的に実施
【コンサルティング機能】
第2次行政システム改革の取り組み支援
【トレーニング機能】
地域政策研究「未来塾」
第1回テーマ「分権時代の自治体職員の役割と心構え」西尾勝(東大名誉教授)
第2回テーマ「自ら考え行動できる基礎自治体職員を育てるために」亀井善太郎(東京財団研究員)
3、所感
草津市から立命館大学の一部学部が茨木市に移転するようだが、その際、草津市は何らかの対応をとらないと、大きな財産を一部喪失することになろうかと思う。