「都市」創刊15周年 「自選一句」とミニエッセイ
たんぽぽや終に子どもは授からず 三遊亭らん丈
今は亡き、俳句の最初の師匠は加藤楸邨門下でした。その先生が常常おっしゃっていたことは、「俳句は向日性がなければならない」ということでした。
掲句が「都市」に掲載された際、この句をお二人の会員が誌上で言及して下さり、何れも子どもがいなくても、季語の「たんぽぽ」で気持ちを切り替えて、「夫婦の生活を楽しんで生きて」いるとのご指摘をいただきました。以て、本意を遂げた思いでした。
【青桐集】
凩やめがね拭ひて立ち向かふ
しぐるるや引越し蕎麦の伸びるまま
妻と入る風呂にて選ぶ歳暮かな
さまざまなもの失くしたる年の暮
そろそろと洗濯たたむ三ヶ日
【都市集】
年の市曇りし眼鏡拭きもせで
寄鍋や上着を脱ぎて御かはりし
網棚に置かれしマフラーどこまでも
夜半の冬忌日一覧見て過ごす
蜜柑選るその眼余りに真剣に