【青桐集】
梯子乗り一点見つめ昇りをり
障子に映る我が身を攻める仔犬かな
パラフィン紙粉粉となる憂国忌
図書館の行きも帰りも枇杷の花
昨年の続きを開けて読始
黒岩 徳将(いつき組・街)
スマートフォンのアプリを使えば、
前回読んだ箇所を的確に示してくれ
るのだが、この句は紙の本と解釈し
た方が本の手触りを感じるし、栞が
あるかもしれないなどと想像の余地
が膨らむだろう。新年の清々しい気
分を寿ぐように詠むのではなく、年
が変わっても淡々と本を読み進めて
いく主人公の平静ぶりを楽しみたい。
考えられる日時は様々だが、いっそ
のこと元日の深夜につい先ほど中断
していた読書を再開するという句な
らなお面白いと思う。
【都市集】
友引に寄席開く寺夜鷹蕎麦
眼を休め遠くを見るや帰り花
熱燗や御礼の声は高らかに
首にざぼん提げて来たれる松葉杖
帽子脱ぐ間もあらばこそおでん酒