町田市議会議員 会派「自由民主党」/(一社)落語協会 真打 三遊亭らん丈【公式ウェブサイト】

三遊亭 らん丈

俳句 記事一覧俳句

『季刊芙蓉』第78号・2008年冬

2008.12.01(月)

棒と化す足もぎみたし土用入(★)
言葉持たぬ猫睦まじく秋に入る
飲まなければとても好い人鰻食む
下ろしたての靴履き出でて大夕立
歯にはさまるあたりめを抜く晩秋
歯を磨いても痛みは取れぬ白露かな
人はテストされ試され冬近し
ゆったりと動く小鳥を見たことなし

『季刊芙蓉』第77号・2008年秋

2008.10.01(水)

尻取りで「ず」を探し梅雨に入る
眼をつむり盲導犬に引かれ立夏
退院しいつまでも万緑に見入る
トマト入れた味噌汁をこはごは飲む(★)
阿修羅となつて物捨つ憲法記念日
母の自転車に空気を入れて芒種はや
妻と手繋ぎ献血に行く夏至

『季刊芙蓉』第76号・2008年夏

2008.07.01(火)

居並びて日向ぼこする猫と犬
物捨てる喜び見つく春の闇(★)
捨てられぬ背広着て行く春隣
眼を醒まし数かぞへをり冬の夜
草の芽を見つめ嗅ぎ掘り始む犬
寒明の道に落ちゐし帽子拾ふ
眠られぬ日々続きをり寒戻る
電車の席譲りて立ちて梅を観る(★)

『季刊芙蓉』第75号・2008年春

2008.04.01(火)

席譲る人の瞳に映る茱萸
奇跡的に長き胴持て余す冬
瓦煎餅嫌ひなままに冬に入る(★)
怪我の治療で失神したり冬の昼
富士を見て不死想ふ冬至の日
ふと実存を思ひ做す初景色
上機嫌の師に戸惑ひつ大晦日
捲りしカレンダーに見惚れる年の夜

『季刊芙蓉』第74号・2007年冬

2007.12.01(土)

風鈴売ゆつくりと天秤棒下ろす(★)
肩越しに見るアシカショー夏の午後
妊婦にも隔てなく降る驟雨
少し前屈みで歩む炎天下
夏休みの課題は『破戒』読むことに
夏を退治し自らを誉めやうか
嫌ひな人を誉めそやしたり秋の風
ミス日本かほどに奇麗秋めきて

『季刊芙蓉』第73号・2007年秋

2007.10.01(月)

散髪の帰りに立ち寄る菖蒲田
喪服だろうがシャーベット頂きますよ(★)
短夜に迷惑メイル征伐す
眼鏡掛けたまま午睡に誘はる
袷てふ季語の不思議を語り居り
上野公園緑雨のレオナルド展
消防活動終へて麦茶を振舞はる

『季刊芙蓉』第72号・2007年夏

2007.07.01(日)

消しゴムで答案破れ受験生(★)
目が腐るほど番号見詰む受験生
少し多目にバター塗る三ヶ日
春ショール外す仕種の軽やかに
背の違う遺弟の靴履き苗木植う
しじみ売しみじみと釣銭数う
年重ね頑なになり花の冷
整理しかねたネクタイ締めて麗らけし

『季刊芙蓉』第71号・2007年春

2007.04.01(日)

深まらぬ議論の傍らちちろ鳴く
酒呑むと卑しくなりぬ十三夜
月光を頼みの消防団訓練(★)
鼻に惚れてもそれも恋冬の朝
書き留めぬままに成さぬ句数え日の
リスかじる胡桃味はふこともなく
美しき人風邪声も美しく
大根の肌さすりつつ通話中(★)

『季刊芙蓉』第70号・2006年冬

2006.12.01(金)

美人は口大きと知れりパリー祭(★)
夏木立ベンチの上の文庫本
帰省から戻りし絵日記白きまま
図書館は休館晩夏の受験生
昼寝人読みさしの本従えて
夏木立木漏れ日の滝かいくぐり
扇風機・エアコン嫌い水を呑む
余りにも小さき教会蕪のごと

『季刊芙蓉』第69号・2006年秋

2006.10.01(日)

菜の花にふと立ち留まる犬二匹
薫風を受けて墓地を全力で走る
線引きつつ教科者を読む新学期
音立てず蕎麦食う外国人梅雨入
梅雨に入り時計を変えて旅に立つ
寝酒呑んでも眠られぬ男梅雨
傘捨てて抱き合ふ二人梅雨最中(★)