『都市』第83号・2021年10月

教会の屋根から出づる二重虹
柏餅いつの頃から買ひもせで
一渡り睨めまはしゐる青葉木菟
夏めくや楽屋のスリッパ新調し
電車下り初めての町鰻食ぶ
教会の屋根から出づる二重虹
柏餅いつの頃から買ひもせで
一渡り睨めまはしゐる青葉木菟
夏めくや楽屋のスリッパ新調し
電車下り初めての町鰻食ぶ
都市集【巻頭】中西 夕紀(主宰)選
春の昼離れ見詰むる紙芝居
終電の網棚にあるチューリップ
コロナ禍の色無き町に春の雨
風光る靴音軽く坂上がる
いくぶんか帯をきつめに初浴衣
背負ふ母重くもなくて木の芽時
都市集 中西 夕紀(主宰)選
掲示板去りては戻る受験生
初雪にカーテン開くるもどかしく
通夜の家声を潜めて火の用心
鳥交る死を知り初めし小学生
薄氷を靴のかたちに踏み抜けり
土器拾ひ決まる人生春一番
「都市の窓」選
マスクして美しさ増す人ありぬ
新米と味噌汁だけの朝の膳
記憶てふ曖昧なもの咳き込みぬ
小春日や耳の掃除を念入りに
失くしてもきつと出てくる冬帽子
羽織紐締め忘れての残暑かな
猪口を伏せコップで受けし菊の酒
秋気澄むパンセ手に取り長椅子に
身に沁むや第一ボタン強く留め
黄落や車列に向かひ敬礼す
都市集 中西 夕紀(主宰)選
落第生布巾の黴を見つめをり
百合を持ちあごを引きつつ撮る写真
田水沸くピンポン球が浮いてをり
厚き本車内に持ち込む帰省の子
真剣にアイスクリーム掬ふ母
ざんばらの力士歌いつ門火焚く
衣更消防団の階級章
裏庭に草茂り居る朝礼台
夏至の日や売るべき本を決めあぐね
紫蘇薬味少し多めに昼の膳
左見右見こはごは掬ふ泥鰌鍋
どこからかフルート聞こゆ苗木市
幾分か帽子目深に卒業生
花冷の茶会に向かふ兄いもと
師の前で若きままなる四月馬鹿
歯がなくも歯を食ひ縛る吹流し
好天に恵まれし日よ大根引く
春立つや広辞苑取る手も軽し
はうれん草箸伸ばす手は真つすぐに
リハビリに励む犬にも春来たる
春の蚊を眼で追ひて犬走り出す
柿落葉はさみ閉づるは福音書
茶の間にていびきかく妻御代の春
ぼろ市や一度帰りてまた向かふ
鮮やかな初夢見たり酒を断つ
初詣同級生へ手を挙ぐる
町田市議会議員 会派「自由民主党」/(一社)落語協会 真打