『都市』第73号・2020年2月
栗御飯栗から食ぶる夜更けかな
稲刈りて萬年筆を買ひに行く
草紅葉友ゐない子を迎へ入れ
ドラマでは易く人死ぬ根深汁
飼犬の留守番つとむ七五三

栗御飯栗から食ぶる夜更けかな
稲刈りて萬年筆を買ひに行く
草紅葉友ゐない子を迎へ入れ
ドラマでは易く人死ぬ根深汁
飼犬の留守番つとむ七五三
遮断機や汗拭ふ人見つめをり
披露宴遅刻する夢残暑の夜
吊橋を親子でわたる終戦忌
洗濯の深夜に及び星月夜
靴の紐締めてゐる間の流れ星
ミサののちふらここを漕ぐ神父たち
蕗噛みて忘れたきこと忘れけむ
勝ちて泣く石榴の花に見つめられ
七夕に男二人で映画観て
雪渓の足跡深く交錯す
手の甲に心覚えや新入生
雁風呂や帽子おさへて急ぎ足
啄木忌震へる手にて書く日記
愛鳥週間啄木の歌集手に
閉店を知らず訪ふ夏の霜
振り向かずとも富士のある冬の空
犬二匹耳そばだてる初音かな
雲間より陽の輝きて大試験
波を見て逃ぐる子のゐる磯開き
初蝶に大気揺れゐて日も揺るる
学び舎に法の意味知る隙間風
冬の夜寝てゐる顔は嘘つかず
お揃ひのセーター着込み寝台車
起き上がる覚悟もなくて初寝覚
両手持て成人式の握り飯
逝きし子も色なき風に吹かれけり
肩薄くなりたる母と秋刀魚食ぶ
鰯雲もう一度息深く吸ふ
実のある話とは何ぞ太閤忌
どんぐりの命を拒む固さかな
新しき傘差し兼ねる時雨かな
辞書をもて「放屁」引く子ら夏休み
秋暑し剃り残したる髭一本
蝉時雨お蔭さまにて難聴に
やや力入れ歯を磨く菊日和
三日月を見上げつ薄荷糖しやぶる
教室の机の上の白躑躅
白昼の蛇騒動を遠巻きに
人に遭ひ放す妻の手花火の夜
夏至の日の自転車をこぐどこまでも
ゆで卵塩多く付け夏来る
春の宵求めた辞書をなでさする
幼子の小さき手合はすイースター
霊柩車遠足のバス追ひ抜けり
水切りの石投げ分けて夏に入る
柔道着乾かぬうちの春驟雨
町田市議会議員 会派「自由民主党」/(一社)落語協会 真打