『都市』第61号 「俳句と私」
自選五句
たんぽぽや終に子どもは授からず
寒星やメニューに見入る老夫婦
片想ひ独活の天ぷら噛みしめて
完璧な蟹股歩きやませ吹く
漱石忌卵落としてカリー食ぶ
「俳句と私」
ressentimentというフランス語を、私は日本語として覚えました。
このルサンチマンを、広辞苑(第二版補訂版)にあたると、「怨恨・憎悪・嫉妬などの感情が反復され内攻して心に積っている状態」と記されています。私が俳句を詠むのは、まさにルサンチマンによるのです。
「怨恨・憎悪・嫉妬などの感情が反復され内攻して心に積って」くると、それらを吐露しないと苦しくなります。そんなとき、「こん畜生」とおもいながら俳句を詠むと、心が平らかになってくるのです。花鳥諷詠は、あらばこそ、です。
心に積った憂さを晴らすために、俳句を詠む、これが「俳句と私」とのただならぬ関係です。