『都市』第46号・2015年8月
真情を打ち明けたくて黄水仙
霾(ばい)の中自転車をこぐ墓参かな
卒業式ついつい浅く腰をかけ
鳥帰るひとに云へないことが増え
一切れの羊羹の味麦の秋
真情を打ち明けたくて黄水仙
霾(ばい)の中自転車をこぐ墓参かな
卒業式ついつい浅く腰をかけ
鳥帰るひとに云へないことが増え
一切れの羊羹の味麦の秋
親の悪い癖ばかり似て年男
同窓会マスク外さず受付す
ふと足の爪剪り初(そ)むる木の芽かな
日本人小粒となりぬ春寒し
洗濯もの干しゐて薔薇の芽に見入る
弓を持ちバス待つをんな小正月
口あけて見てゐる人や富士初日
大元旦川沿ひの道早歩き
年男悪い癖ほど親に似て
吾を師匠と呼ぶ教授なり大試験
長き夜やピーナッツ袋空にして
唐辛子ついかけ過ぎる宿酔
長き夜や乳母車押す母がゐて
近眼の雁ただ後について飛ぶ
霧の中ぬつと現る人がゐて
人生を大きく変へし夕立雲
蛇口の水直に飲みをり雲の峰
秋めくや小学校の朝礼台
憤怒込め杖をつきつつ秋に入る
朝顔の鉢持つ指の指輪かな
若竹のしなり何度も確かめり
新茶飲み再び見上ぐ飛行船
白シャツや一心不乱に勉強す
丈合はぬ浴衣似合ふはインド人
駆け込めり夏の真昼の映画館
たんぽぽや終に子どもは授からず
虚子忌とは知らで男の子ら踊りをり
柳絮飛ぶ懐中時計とは無縁
蕎麦つゆを余さず飲んで夏来る
まづ見てくれと通さるる初節句
霜焼の手をこすりつつ打つメール
車から見つけし梅や開けて見る
春の朝モーツァルト聞き投票す
街宣車エールを交はし山笑ふ
師が居ることの幸せ小鳥帰る
凩や手に大冊の重たき日
五十路なる歯間の葱の取れぬ日の
秒針の音が気になる雪催
焼鳥を妻と分け合ふ九本目
短日や本の整理は終はりなく
梅雨晴間猫は欠伸を思ひ切り
向日葵は六等身を恥じりをり
蜥蜴にも「さん」とつけやる園児かな
サングラス遺品整理の手の止まる(★)
飛魚のげに楽しげに飛びにけり
記念撮影流星を待ち並びをり(★)
包丁の切り口見事秋茄子
献血の空いた手に持つ鬼胡桃
町田市議会議員 会派「自由民主党」/(一社)落語協会 真打