「週刊文春」に連載していた高島俊男の『お言葉ですが…』シリーズは、評判の書です。
どのように、評判なのか。
その歯に衣を着せぬ物言いが評判なので、江湖の好評を得ているのです。
本書においても、それは遺憾なく発揮されており、たとえば、下記のようなコメントがあります。
“金田一春彦先生も死にましたね。世に害毒を流すことが多い時局迎合型の人であった。”
諸田玲子さんの時代小説も、こてんぱんにやっつけていました。
実際、江戸の庶民が“連絡、報告、神経”と言うのですから、呆れてしまいますが。
なかで、『「スッキリ県」と「チグハグ県」』が特に、面白かった。
つまり、県庁所在市が県名と同じ場合が「スッキリ県」、そうでないない場合が「チグハグ県」。東日本にチグハグ県が多く、西日本に少ないのは、戊辰戦争で薩長新政府方についたか否かで分かれた、という指摘(宮武外骨説)には、なるほど、と膝を打ちました。
他にも、井伏鱒二を昭和第一の作家、という指摘や、“斎藤茂吉と柳田國男とは、二十世紀の日本文学界に出現した二人の巨人、いや二ひきのバケモノである。”にも深く首肯しました。