町田市議会議員 会派「自由民主党」/(一社)落語協会 真打 三遊亭らん丈【公式ウェブサイト】

三遊亭 らん丈

兼子 仁『新 地方自治法』(岩波新書)らん読日記

2007.10.27(土)

【早稲田大学法学部・2006年度】地方自治法Ⅰ・Ⅱ
【担当教員】辻山幸宣〈地方自治総合研究所所長、中央大学大学院公共政策研究科客員教授〉

兼子 仁〈都立大学〉名誉教授による、2000年施行の新地方自治法に対応した著作

辻山先生が地方自治法Ⅰ・Ⅱの参考文献として挙げている、地方自治法に関する基礎文献

 さて、本書のタイトルは『新地方自治法』となっており、それは、第二次世界大戦後の日本国憲法の下で、″自治体″と自治行政体制の全国的なあり方を定めた「地方自治法」において、長らく「国の機関委任事務」という自治体の長を国の出先とするしくみを認めていた法律から、1999年7月の地方自治法の大改正によって生まれた″新自治法 ″が、1995年の「地方分権推進法」とそれに基づく地方分権推進委員会の働きを踏まえて、機関委任事務を廃止し、国と自治体、都道府県と市区町村の行政面での「対等」原則を定め、まさに日本の地方自治法制を一新した、新しい地方自治法となったことに起因した題名です。

 東京都立大学(現・首都大学東京)名誉教授である著者の兼子仁は、すでに同じ岩波新書(黄版)で、『地方自治法』を上梓しており、旧著以上に岩波新書らしくしようとして、本書においては自治法制のたんなるしくみ解説を減らし、生きた問題や事例を多く論じており、そのためにかえって法的なむずかしさが増したのではないかと危惧していますが、それは、たんなる杞憂におわっており、地方自治法をコンパクトに概説した好著となっています。

 1999年の地方自治法大改正は、「地方分権」の意気が籠められた、「明治維新、戦後改革に次ぐ第三の改革」と位置づけられます。
 そこでは、前述のように、機関委任事務なきあとの「自治事務」と「法定受託事務」によって、国と自治体、都道府県と市区町村が相互に「対等」原則に立つことの再認識が肝要だと指摘されています。
 特に、分権改正による新自治法制において、市町村は、かねて「基礎的な地方公共団体」と法定されていた意味合いをますます重視され、「地域」に第一次的責任をもつ住民に身近な″基礎自治体″として、その行財政能力の向上を格段に期待される存在としてクローズアップしています。
 つまり、日本国憲法下(憲法94条)では「地方公共団体」(自治体)が、国と並ぶ統治の主体、つまり″ミニ国家″となっていることにも注意を払わなければいけません。

 そんなところから、これからは″市区町村が面白い″といわれるのでしょう。
 そのためには、住民が生活する者の眼で、「地方自治法」をはじめ自治体行政の法的しくみを勉強する必要が高まっているのです。

 なお私は、193ページで著者が、“分権自治体の議会立法「条例」は現憲法上直接に法律と並ぶ国家法の効力を保障されていると解する”と表明している筆者の姿勢には、深く共感した次第です。