森博嗣という、人気作家がいるのは知っていました。
同氏は、映画「スカイ・クロラ」の原作者であり、国立N大学工学部建築学科の元助教授であったことも存じてはいましたが、いままでその著作を読むことはありませんでした。
今回はじめて森の著書『大学の話をしましょうか』を読んで、その真っ当なお考えに引きこまれました。
本書は、多くを森への質問とその回答という形式をとりつつ、副題にあるとおり、「大学の装置と可能性」についての、森の感懐が惜しみなく語られています。
たとえば、人間の基本的な能力を森は、次のように語っています。
“人間の力とは、つまり、うっすらとした情報をいかに的確に思い出せるか、ということに尽きます。”50-51頁
“人間の知的能力は、問題に答えることではなく、問題を見つけることである。”54頁
“今少し我慢すれば、将来もっと自由が手に入れられる、という計算で頑張ることができる、それが人間の基本的な能力ではないでしょうか。”146頁
大学については、森は次のように語っています。
“大学は基本的に研究を行うところです。そこに、学びにくる学生たちがいる。研究する人の身近で、学問とは何なのか、学ぶということにはどんな楽しみがあるのか、を知る場所なのです。”170頁
上記以外にも、森の意見の多くを、ご尤もであると思った次第です。