「文化と芸術」
俳句連盟会長 三遊亭らん丈
吉田秀和さんを、本誌を手にしていらっしゃる多くの方はご存じのことでしょう。吉田は、大正2年生まれですから11年前に98歳にして幽冥境を異にしております。吉田が音楽評論にあらたな地平を開き、それによって文化勲章を受章したのは、画期をなしました。
吉田は、旧制高等学校の学生時、詩人の中原中也にフランス語を習い、おなじ高校1年生でニーチェを原文で読んで理解できたのですから、極め付きの文化人です。
後年、「子供のための音楽教室」とそれを発展させた桐朋学園音楽科の設立に参加し、そこから、小澤征爾、中村紘子や堤剛らが巣立ったのは特筆に値します。
その吉田秀和は、こんなことをいっています。「生活していくうえでの苦労や喜びや悲しみとは別次元のところにも、人生はあり得ることを知った」。正に、ひとは生活していくうえでの苦労はありますが、それとは別次元のところにも人生はあるというのです。
そこから吉田は、「芸術は生活を飾る花、余裕があってはじめて生まれるものと考える人が多いけれど、それは逆。芸術は生活の根なのです」というのです。
芸術あっての文化です。その一翼を担うためにも、俳句連盟はすくない会員ながらも、日々研鑽し、俳句という詩を紡いでいます。