町田市議会議員 会派「自由民主党」/(一社)落語協会 真打 三遊亭らん丈【公式ウェブサイト】

三遊亭 らん丈

らん読日記 記事一覧らん読日記

丸谷 才一『樹影譚』(文春文庫)

2007.06.12(火)

1)恰好
 この小説は、画然と3つの部分に分けられた構成となっている。
 それらはただ時間的、全体的に3つの部分に区切ったわけではなく、それぞれに異なった小説的機能を有した3つの別種のブロックによって形成されたものとなっている。

(1)前置き
 丸谷才一と思しき作者は垂直な壁に映る樹木の影に、魅かれている。
 何故かしらそれに昔から心を惹かれる傾向がある。ただ作者は、それが何故であるのか、明確な理由、根拠が思いつかない。 それを出しに小説を書いてみようとしているのだが、それに着手することができずにいる。
 それは作者が数年前に、どこかで、似たような筋立てのナボコフの小説を読んだことがあるからである。

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新藤 宗幸『講義 現代日本の行政』(東京大学出版会)

2007.05.06(日)

【箇所】20007年度前期 早稲田大学大学院 社会科学研究科
【科目】行政組織論Ⅰ公共組織論
【担当】辻 隆夫〈早稲田大学 社会科学総合学術院〉教授
【著者】新藤 宗幸〈立教大学法学部→千葉大学法政経学部〉教授

第2章 権限・権力・行動

〔はしがき〕
 本書はしがきに著者が記すように、“精緻に組み立てられた生涯職官僚機構と経済社会と(の)あいだに緊張関係を欠いてきたことが、今日の閉塞状況をもたらしているとの観点に立って、現代日本の行政システムの特徴を描き出す”のが、本書を通じてのモティーフである。

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田村 正勝『見える自然と見えない自然』環境保護・自然の権利・自然哲学(行人社)

2007.04.20(金)

【科目】2007年度 早稲田大学大学院 社会科学研究科 社会哲学Ⅱ
【担当】田村 正勝〈早稲田大学 社会科学総合学術院〉教授

2007年度社会哲学Ⅱテキスト

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梶井 基次郎『檸檬』

2007.03.15(木)

 梶井基次郎の『檸檬』は、大正十三年十月に完成をみた小説だそうですが、今日にも通ずる面を多くもった作品です。

 「えたいの知れない不吉な塊が私の心を始終圧えつけていた。」との書き出しは、カフカの『変身』の冒頭を想起させ、現代人が共通してもつ愁訴をまず露呈させます。
 この”不吉な塊″は、「えたいの知れない」ものであるがゆえに、現代性を獲得しているのです。

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一川誠・池上彰『大人になると、なぜ1年が短くなるのか?』(宝島社)

2007.01.17(水)

 一川 誠〈千葉大学 文学部行動科学コース〉教授と池上彰による対談を書籍化した、『大人になると、なぜ1年が短くなるのか?』によると、時間には、世界標準時間として時計で示される時間のほかに、心理的な時間があり、その心理的な時間が子どもの頃よりも遅くなるので、実際に目で見て測ることの出来る時間があっと言う間に過ぎるから、という説明がなされていました。

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桐生清次『障害者雇用のパイオニア渡辺トク伝』ミネルヴァ書房

2007.01.15(月)

1、〔沿革〕
 本書は、1989年3月に『捨てられしいのちかつぎて』という題名で、柏樹社から発行されたものを、大幅に書き換え、また加筆し内容を充実させたうえで、知恵遅れ、精神薄弱を知的障害に文言を改めて、再刊された作品である。

2、〔梗概〕
 本書は全4章からなる章立てとなっているので、以下に第4章を除く各章をまとめる体裁で梗概を記す。

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太宰 治『魚服記』〜『晩年』より

2006.11.27(月)

〔執筆事情〕
 『魚服記』は、太宰が同人誌「海豹」に加わるために提出した作品である。発表は昭和8年3月号の同誌創刊号であるが、制作の時期は明らかではない。
 なお本作品は、同誌同人今官一に太宰が同人に勧誘された際、提出した作品であることから、太宰にとっては、相当の自信作であったことが容易に推測される。
 それを裏付けるように、本作品は同誌に、太宰自身によってていねいに墨書されて提出されており、これを見た木山捷平、古谷綱武らの同人諸氏は驚倒し、すぐに同人入りは許された、とのことである。

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NPO大阪障害者雇用支援ネットワーク編『障害のある人の雇用・就労支援Q&A』(中央法規出版)

2006.11.06(月)

【箇所】早稲田大学 社会科学部 専門科目
【科目】障害者福祉論[2単位]
【担当】篠田 徹〈早稲田大学 社会科学総合学術院〉教授
第1章 障害のある人たちの活動を豊かにする企業〜企業と障害者〜
第2章 障害の理解を
1)本書のタイトルに“障害”という文言が使われており、本講義名も「障害者福祉論」となっていることに関して。

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田村 正勝『社会科学のための哲学』(行人社)

2006.10.25(水)

【箇所】早稲田大学 社会科学部 専門科目
【科目】社会科学方法論[4単位]参考書
【担当】田村 正勝〈早稲田大学 社会科学総合学術院〉教授
1、要約
1)哲学と社会科学の課題
 人類は、西洋において通常使われる*時代区分において、古代、中世、(近世)、近代を経て、いまや現代へと至ったのであるが、その間、当然のことながら時代区分毎の、実に多くの時間相を経験した。
 *以下、小稿における時代区分はすべて、上記のとおり西洋における時間軸によるものとする。

 近代以降の人類にとって、たとえば戦争や世界恐慌などは、社会科学が密接に関係した事象である。
 このような歴史の流れを形成したその根源に、哲学としての社会科学がある。
 この哲学や社会科学の思想の源泉は、古代にまで遡ることができる。
 その後、中世においては社会の頂点に神が君臨していたことによって、世は統べられていた。

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Michel Foucault『主体の解釈学』(コレージュ・ド・フランス講義 1981-82)廣瀬浩司/原和之訳(筑摩書房)

2006.10.20(金)

ミシェル・フーコー 講義集成11『主体の解釈学』

「現代社会にフーコーが与えた影響〜“配慮”という言説を通じて」
《構成》
1、緒言
2、本文
3、跋文

1、緒言
 ミシェル・フーコーが自らを「社会学者」と名乗ったことは一度もない。むしろ、哲学者もしくは歴史家であると考えていたようだ。それにもかかわらず、今や社会学者によってもっとも多用される理論家の一人となったのは、彼の関心がつねに「現代社会がいかに構成されているか」という点に存していたからにほかならない(注1)。
 続けて渡辺彰規の言葉を、引用する。
 その分析の際に注目されたのが「言説」である。(『知の考古学』河出書房新社)。(中略)その時代にいわれたこと・書かれたことを、人間の意志を離れた何らかの規則によってコントロールされているような「言説」として把握し直すことで、まったく新たな視点から社会を分析することがめざされたのである(注2)。
 小稿は、“配慮”という言葉を、上記の「言説」の謂いとして捉え、フーコーはこれをどのように考えたかを検討したい。

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