・民主政治は「説得」で動いている
・らん丈へのインタビュー
民主政治は「説得」で動いている
タイトルの『民主政治は「説得」で動いている』は、早大でわたしが受講した講義、「情報政治論」の教科書『情報政治学講義』(新評論)開巻に、著者の高瀬淳一教授が記しているフレーズです。
その民主政治の本場といってもよい米国に、世界中が注目するなか、さる2009年1月20日正午(日本時間21日午前2時)、第44代となるバラク・オバマ大統領が誕生しました。小誌をお読みいただいている方の中にも、翌朝のことを気に掛けながらその様子をテレビでご覧になられた方が数多くいらっしゃることでしょう。
大統領就任式には、零下2度の厳寒のワシントンに、なんと200万人以上もの、過去最多となる聴衆が集まったのでした。凍てつく寒気のなか、その大聴衆は、ほかでもなく、オバマ大統領の言葉を聴きたいがために集まったのでした。
その演説は、約19分間に及ぶものでしたが、当然ながら原稿を見ることなく、オバマ大統領は一種複雑な表情を浮かべながら、My fellow citizensと語り始めました。
これは、初代大統領ワシントン以来の伝統を踏襲してのものですが、その演説で基調となったキーワードは、「自己犠牲」「無私」「責任」さらに「共通の目的」「アメリカの再建」など〔久保文明(東大)教授、朝日新聞1月22日朝刊〕でした。
“What is required of us now is a new era of responsibility”(いま私たちに求められているのは、新たな責任の時代だ)は、その代表的なものでしょう。
“but also our collective failure to make hard choices and prepare the nation for a new age.”(私たちが全体として、困難な選択を行って新しい時代に備えることができなかった結果でもある)は、その同工異曲といえましょうか。
オバマ大統領の就任演説を、米国の政治評論家、チャーリー・クック氏は「オバマ氏の就任演説は堅実で、非常に良かった。(中略)米国と世界が直面する経済の難問を反映し、落ち着いていて地味な、中身のあるものに調整されていた」(朝日新聞1月30日朝刊)と手放しの称讃ぶりです。
たしかに、あのような演説をきくと、役者の格が違うとして片付けるわけにはいかず、同じ政治に携る者として、いささか忸怩たるものを感じざるを得ませんでした。
ただ、私にしろ、政治は言葉が重要である、という認識においては、オバマ大統領や高瀬教授となんら変わるところがないのです。
その何よりの証左として、この『はるかぜ』を定期的に発行しているのですし、ブログはほぼ毎日更新しているのです。
最後に、作家の丸谷才一さんの次の言葉を引いておきます。
「デモクラシーによる政治とは何かといえば、身分だの財力だのによらないで、言語の力で民衆を説得して、それによって政治をおこなうことですね」(朝日新聞2000年4月5日朝刊)。
らん丈へのインタビュー
「はるかぜ」を尚一層分かりやすい紙面にするため、今回初めて、らん丈の現在の市政に対する心構えを読者の皆様によりよく知っていただけるように、『らん丈へのインタビュー』という形式をとらせていただきました。
Q1:市議会議員になってちょうど3年を迎えます。どんな3年間でしたか。
ら:本当にあっという間の3年、がむしゃらに突っ走った3年でした。
Q2:具体的には、どんな3年間だったのでしょうか。
ら:議員は町田市の場合、4常任委員会のどれかひとつに属します。総務、健康福祉、文教社会、建設の4委員会です。それを議員の任期4年の前後半に分けて2年ずつ、異なる委員会に所属する申し合わせがあり、それにしたがって、始めの2年は、保健福祉(当時、2008年に委員会名が変更)常任委員会に属し、後半となる昨年からは、文教社会常任委員会に属しています。
私は、市議会に立候補したときに福祉の充実を訴えましたから、それを審議する保健福祉常任委員になったのですし、文教社会常任委員は、私自身現在まだ(早大)大学院に通い、教育の現場にいる議員として、それを審議する委員会に入りたかったからなのです。
そのほかにも、特別委員会として、決算特別委員会では、平成19年度と20年度に委員を勤め、そのうち、20年度は委員長を勤めさせていただきました。
また、議会改革調査特別委員会では、副委員長を勤め、町田市庁舎建設等に関する調査特別委員会の委員でもあります。
それ以外の時間を縫って、細々と落語家として高座に上がり、大学院は昼夜開講制なので、午後6時過ぎで空いている日は、早稲田の大学院に通っていました。専攻は、政策科学論です。
ただ、政策科学といっても分かり辛いとおもいますので補足しますと、「現代人権論」の研究室に入り、公務員の人権について研究しています。
Q3:なるほど、議会は、本会議以外にも多くの常任委員会や特別委員会があるのですね。
ら:それだけではなく、昨年までは、町田市国民健康保健運営協議会委員でしたし、昨年から新たに、町田市青少年問題協議会委員も勤めています。
Q4:そういうことは、なかなか、一般の市民は知らないことだと思います。
ら:そうかもしれません。ですから、私は、自分のHPで出来る限りオープンに公表しています。お暇な折に、是非、ご覧下さい。かなりたくさんのコンテンツをご用意していますよ。URLはこちらです。⇒https://www.ranjo.jp/
Q5:では、議員のメインの仕事として市民が認識している、本会議はいかでしたか。
ら:町田市の場合、ほとんどの都道府県、市区町村と同じように、年4回、3,6,9,12月を中心に本会議が開かれます。それを定例会とよびます。ですから、今年の2月27日から開かれる本会議は第1回定例会となるわけです。その定例会は、私が議員になった最初の2006年の第1回定例会から、現在に至るまで、12回開かれましたが、そのいずれにおいても私は、議員の権利を行使するという観点から、必ず一般質問を行ってきました。
Q6:その「一般質問」というのは、議会独特の用語だと思いますが、どういったものなのでしょうか。
ら:町田市議会会議規則によれば、その62条に次のように記されています。
第62条 議員は市の一般事務について、議長の許可を得て質問することができる。
2 質問者は、議長の定めた期間内に、議長にその要旨を文書で通告しなければならない。
つまり、市議会における一般質問とは、町田市の一般事務についての質問、ということになります。
Q7:分かったような、よく分からないような、もう少し詳しくお話いただけますでしょうか。
ら:失礼いたしました。つまり、町田市の行政分野においては、ほぼすべての案件にわたって、市に質問できる、ということです。
Q8:では、いままでにらん丈さんは、どんな一般質問をしてきたのでしょうか。
ら:一般質問は、かなり広範囲にわたって、様々な分野で行ってきました。それは、小誌の4頁に網羅されていますので、是非ご覧頂きたいのです。
なかでも、最も印象に残っているのが、平成19年(2007年)第3回定例会での一般質問で行った、「不要になった入れ歯回収ボックス」を設置してはどうか、というものです。
これは、埼玉県のあるNPO法人では、不要になった入れ歯回収ボックスを設置し、その回収箱に投じられた入れ歯の金属部分を売却した分から生じた収益の45%を日本ユニセフ協会と町田市に寄附し、残りの10%がそのNPO法人の活動費に充てられるという活動を行っているのです。
町田市は私の意見を取り入れ、早速その年の11月に、社会福祉協議会と町田市役所本庁舎1階ロビーに回収ボックスを設置しました。その結果、たとえば、2008年3月と4月に町田市に寄附された分が、87,328円となりました。
この8万円を越すお金は、まさしく降って湧いたようなお金です。それを、なにか町田市に資する事業に当てればいいのです。
私はこれからの議員は、このような視点が大事だと思います。つまり、多くの予算を使うことなく、何らかの施策を実行するという視点からの一般質問は、過去にはあまり見られなかったことだと思いますので、このような一般質問をこれからも随時行う予定です。
昨年から100年に一度という不況に陥り、法人税をはじめ税収の減少が見込まれます。
ですから、これからは市財政を痛めることなく、施策を推進する視点が重要視されるようになると思うのです。
Q9:では、その町田市の財政ということでお聞きしたいのですが、町田市は現在どのような財政事情なのでしょうか。
ら:町田市の一般会計予算は、平成20年度では、1,201億円。特別会計が、991億円。合計2,192億円です。
一般会計とは、一般的な市の行政サービスを受け持つ大きな財布といっていいかと思います。
特別会計とは、特定の目的をもった事業を行う場合や、下水道料金のような特定の収入をもって、事業を行う場合に、一般会計と収支を別立てにした会計のことです。町田市では、国民健康保険事業会計、介護保険事業会計、病院事業会計、下水道事業会計、後期高齢者医療事業会計などが特別会計となっています。
一般会計を中心に、お話しましょう。1,201億円のうち、最も多いのが市税収入です。691億円あります。
「3割自治」という言葉をお聞きになったことがあると思います。この場合の3割とは、収入全体のうち自主財源である地方税収入が3割しかないことを意味しますが、それでいうなら、町田市は「6割自治」といえますから、町田市は財政的にみれば、優等生とはいえなくとも、劣等生では決してない、ということです。
また、町田市は国から多額の交付金を受け取っていません。国からの交付金を原則的に受け取っていない自治体を不交付団体といいますが、平成20年度の市町村における不交付団体は、177団体で、町田市もそこに当然含まれているのです。現在(2009年2月8日)の市町村数は、1,781ですから、177といえば、財政的にみて上位約1割のなかに町田市が入っている、ということですね。
これらを勘案すれば、町田市の財政事情は悪い、という結論は導き難いかと思います。
逆に言えば、いままで町田市は批判の対象となるようなハコモノをあまり作ってこなかった、ということもいえます。
たとえば、市民ホールはもともとは民間のボウリング場でしたし、文学館ももともとは公民館でした。それを改築して利用しているのですね。
これを難しいことばでいうと、国内総固定資本形成(gross domestic fixed capital formation)というのですが、それが他市町村に較べると際立って低い、ということがいえるかと思います。その端的な例が、町田市のお粗末な道路事情が挙げられるかと思いますが、その分、町田市は福祉分野に予算を振り向けていたわけですから、「選択と集中」の観点から、それもひとつの見識であったのかと、私は思います。
Q10:ありがとうございました。町田市の財政の現状がよくわかりました。次に、決算特別委員会の委員長を勤められていかがでしたか。
ら:なにしろ、こっちは1期生で、委員の方々は、ベテラン揃いですから、果たして委員長役を勤められるかどうか、不安もあったのですが、お蔭様で無事終えることができました。
常任委員会というのは、それぞれ市の所管の部局の職員とのみ審議するわけですね。文社会であれば、市民部、文化スポーツ振興部、子ども生活部、教育委員会が担当所管です。
それ以外の所管の職員さんとは、なかなか議論する機会がないのですが、決算特別委員会では当然ながら、町田市のすべての部局の課長級以上の方々と審議するわけですから、町田市職員の全体的な現状がいやでも認識できるのです。
すると、「これは大丈夫なのかな」と不安感を募らせられた部局があったのも事実ですね。どこの部局とは、この場ではいえませんが。
ここでいいたいのは、町田市の場合、職員さんのうち、優秀な方々が万遍なく各課に偏在しているのかといえば、相当に偏りがありますよ、ということです。
これはなにも、町田市に限ったことではないでしょうが。
Q11:議員として、これからの活動目標がおありならば、是非お聞かせください。
ら:地方自治体の場合、国と違って、市長と市議会は、どちらも市民から選ばれた存在です。いわば、「二元代表制」として機能しているわけですね。
ですから、政策提案は市長の特権ではないため、議会はあくまでも「チェック機関」に甘んじていたという面もあったかと思います。
したがってこれからは、議会も政策作りに携わらなければいけないのではないかと思います。そんな意味からも、私は今後も特別委員会を重要視したいと考えています。