町田市議会議員 会派「自由民主党」/(一社)落語協会 真打 三遊亭らん丈【公式ウェブサイト】

三遊亭 らん丈

はるかぜ vol.6 2009年9月号市政報告『はるかぜ』

2009.09.01(火)

・どうしてまた、大学院に進学したのか
・市議会議員の3年を振り返って

どうしてまた、大学院に進学したのか

 「議員を勤めながら、落語も続けられていいね」といった類のお話を承る機会があります。それとは意味が異なりますが、福澤諭吉に、「恰(あたか)も一身にして二生を経るが如く、一人にして両身あるが如し」(『文明論之概略』)という言葉がありますし、なるほど、そのようなお考えもあるのかなとは思うものの、実情はかなり違いまして、たしかにぼくは今でも落語家の暖簾は依然として掲げてはおりますが、議員になる以前と較べると、落語に費やしている時間は激減いたしました。
 それは、当然のことでして、地方議会議員は、地方公務員法により、特別職の公務員と規定されているからです。公務員とは、憲法15条にあるとおり、「全体の奉仕者」ですので、落語という私事に携る時間は自ずと制限されるのです。同じく憲法により、その22条で、「職業選択の自由を有する」ものの、それも、「公共の福祉に反しない限り」という留保をつけてのことですから、落語家を相変わらず続けてはいますが、それも「公共の福祉」に反しない範囲内での活動に限り許される、と解されます。
 その議員と落語家ですが、共通しているところがあります。
 それは、どちらも言葉を主要な手段として、有権者やファンからのご支持をいただき、それを包摂したうえで、自己表現をしていることです。今さら言わずもがなのことですが、それを文化人類学者の渡辺靖(慶応大学)教授は、つぎのように記しています。「近代民主政治は、財力や血統ではなく、言葉で行われるべきものです」(朝日新聞、2009年8月27日[朝])。
 その際、重視されるのは、議員も落語家も、説得力がある言葉を使うか、そうでないか、です。それについては、作家の丸谷才一さんにご登場願いましょう。「言語の力で民衆を説得して、それによって政治をおこなうことですね」(朝日新聞、2000年4月5日[朝])。
 落語と政治とは直接の関係はないように思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、このようにどちらも言葉を駆使し、その言葉を届かせる主な対象は大衆である、という共通点があります。いうまでもなく、落語は大衆から生まれ、育まれた芸能であり、政治も大衆の支持がなければ到底立ち行かないからです。政治で支持を得た場合、それは、一般大衆から盛り上げる民主主義と称され、英語ではつぎのように表現します。democracy at the grass roots
 日本では、民草、といいますから、洋の東西を問わず、民衆は“草”になぞらえられるもののようです。
 では、どうしたら、「言語の力で民衆を説得」できるようになるのだろうか、と自問した結果、ぼくは大学院で学ぶ道を選ぶことに決めたのです。ここに、論理の飛躍があるように思われた方がいらっしゃるかもしれませんが、なんの裏づけもない言葉に、民衆は納得するのだろうか、と考えたところ、学問の裏づけを得るのが、最も手っ取り早いという結論に達したために、大学院への進学を決めたのです。
 すでにぼくは、2009年に早稲田大学大学院社会科学研究科政策科学論専攻修士課程を、修了しており、その際の修士論文の題目は、「『公務員の身分保障』に関する一考察」というもので、そこで、公務員の分限処分について考察しました。梗概は、同研究科発行の『ソシオ サイエンス 第15号』(2009年)に掲載されており、拙HPにも掲示していますので、ご興味のある方はwww.ranjo.jpをごらんください。
 それに加えて、今年度から同じく早稲田大学大学院の今度は、法学研究科に入学し、そこでの研究課題は、「社会保障・社会福祉の法と政策」です。
 研究課題が、「社会保障・社会福祉の法と政策」というのは、具体的には、日本が、本格的な少子高齢社会・人口減少社会の到来を迎え、年金・医療・福祉・介護など社会保障をめぐる諸問題が、わが国における最重要政策課題のひとつとなっており、その際の給付の受け手として、あるいは財源の支え手として、大きな関心事となっていることに起因して、それに対応するため、大変革期にある社会保障制度を分析対象とし、主として法的視座から、わが国が抱える今日的諸問題にアプローチしていくことを狙いとした研究課題なのです。
 また、今後の日本社会の確かな見取り図を得るためには、社会と保障を法学の観点から研究することは不可欠なことと考え、らん丈は、2009年度から再び、大学院で学修する道を選んだのでした。


市議会議員の3年を振り返って

(1)予算0円で町田市の歳入増

 早いもので、私が町田市議会に議席を頂いた2006(平成18年)年3月からすでに、3年半以上も経ちました。本当にアッという間の3年半でした。
 らん丈のHP等でそれは逐一お知らせしていますが、この紙面で、その間の活動のほんの一端を、ご報告させていただきます。
 まずは、市議会定例会のことからお話しましょう。地方自治法が改正されたのに伴いまして、定例会は条例で定める回数これを招集するのですが、町田市議会の場合、「町田市議会定例会の回数に関する条例」によりまして、年4回招集されます。それ以外には、平成18年に一度だけ臨時会が開かれましたが、定例会において、私は毎回必ず一般質問を行い続けました。
 一般質問とは、日常会話ではほとんど聞く機会のない言葉ですが、町田市議会会議規則によれば、その62条につぎのように記されています。「議員は市の一般事務について、議長の許可を得て質問することができる。」一般事務についての質問なので、一般質問というわけですね。
 そこでどんな一般質問を過去に行っていたのかは、年4回発行されている『町田市議会だより』でご覧いただいた方もいらっしゃることでしょうが、本誌最終頁にも掲載していますので、そちらでご確認いただければ幸いです。
 ただ、私がここで強調しておきたいのは、一般質問で、要望として町田市に施策を要求する際に、町田市の予算をなるべくならばあまり費消することなく、それを実現させたいものを積極的に取り上げた、という事実です。
 極端に言えば、町田市の予算0円で、その施策が実現できた際に、逆に町田市の歳入が増えるようなものであれば、最上の一般質問であると考えていることです。
 その例として、平成19年第3回定例会で行った一般質問のうち、『「入れ歯回収ボックス」の開設を望む』が挙げられます。これは、不要になった入れ歯を回収するボックスを市役所や社会福祉協議会に設置することによって、そこに入れられた不要になった入れ歯を、NPO(特定非営利活動法人)が回収することで、その益金を恵まれない子どもたちに寄附し、あわせて、協力した町田市にも益金の一部が還流するというシステムです。
 そのNPOの事業内容は、つぎのとおりです。「不要となった古い入れ歯を回収し、その入れ歯に使われている貴金属を精製した益金を日本ユニセフ協会に寄付することで、世界の恵まれない子ども達に対する支援を行なう。また、「不要入れ歯回収ボックス」の設置にご協力いただく地方自治体の福祉団体に益金の一部を寄付することで、地域社会の福祉に貢献する。」
 私のこの一般質問を町田市は早速とりあげて、「不用入れ歯回収ボックス」が、町田市役所と社会福祉協議会に、平成19年11月1日に設置されました。
 その結果、設置翌年の平成20年の3月と4月の2ヶ月で、87,328円が町田市に寄附金として戻され、福祉活動に役立てられました。
 これこそ、私が理想とする一般質問でありまして、この場合、私の一般質問により、2ヶ月で87,328円が町田市にもたらされたのです。

(2)人に優しいを基本に

 一般質問の際に、もうひとつ留意したことがあります。それは、“人に優しい”です。その例を5つほどご紹介させていただきます。

1)無痛注射針を市民病院で使用しては
 ひとつは、平成18回第2回定例会で行った一般質問です。そこで、私は、町田市民病院で使用する注射針を、2005年度のグッドデザイン賞を受賞した、無痛注射針を使用してはどうか、という提案をしたのです。これに関しましては、特に糖尿病等により、頻繁に注射を打たれなくてはならない患者様のことを慮っての一般質問でした。これこそ、“人に優しい”一般質問であると自負する次第です。
 この一般質問を受けて、市民病院では、この注射針が直ちに採用されることはありませんでしたが、採用にむけて検討は続けてくれたのです。

2)海外での診療でも、保険給付は行われます
 つぎは、一般質問が実現した例です。
 平成20年第2回定例会の一般質問では、国民健康保険法54条に関して、海外で診療を受けた場合には、被保険者がいったん医療費を現地の診療機関で全額支払った後、帰国してから町田市いきいき健康部保険年金課保険給付係にその際の、診療内容明細書と領収明細書等を療養費支給申請書とともに提出した場合、保険給付分が払い戻されることをもっと市民にアピールすることを提案しました。
 それを受けて町田市は、国民健康保険税納税通知書に同封されている「国保ガイド」で、『後で払い戻されるもの(療養費)』という欄を設け、そこで“海外で診療を受けたとき”という項目で、そのことを掲載するようになったのです。
 なによりも親切なのは、らん丈の一般質問を受けて、海外療養費に関して、町田市は英語で、診療内容明細書と領収明細書を作成したので、外国の診療機関にかかる際には、それを携行していれば、手続きが簡便に済むようになったことです。

3)ダイヤル「#7119」の認知度の向上に向けて
 平成20年第4回定例会の一般質問では、ダイヤル「#7119」を取り上げました。これは、平成17年から東京都で始まったサービスです。内容は、つぎの通りです。東京都では相談窓口「緊急相談センター」を設置し、以下のように都民に呼びかけているのです。“通報への判断に迷うときは、#7119(緊急相談センター)に電話する。”
 #7119(緊急相談センター)は、東京都が東京都民を対象とし実施しているが、東京都外からの電話にも応対している。#7119の対応内容は、つぎの通りです。現場の状況を聞いてから、通報すべきかどうかを判断する(医療専門家が対応)。 必要に応じて都内の適切な医療機関を紹介する。
 こうして、病院への搬送が適切に行われることによって、本当に搬送が必要な方が遅滞なく病院に収容されるようになるのです。
 らん丈の一般質問を受けて、町田市は早速、HP等で#7119の広報活動を活発化させ、町田市役所内の電話から、#7119に掛けることができなかったのを改善し、掛けられるようになったのです。

4)ハート・プラスマークの周知徹底に向けて
 平成21年第1回定例会では、町田市が「ハート・プラスマーク」の周知徹底を図るように、一般質問で取り上げました。
 「ハート・プラスマーク」とは、町田市のHPによれば、つぎのように記してあります。「ハート・プラスマーク」をご存じでしょうか?身体障がいには、視覚障がい、聴覚・平衡機能障がい、音声・言語・そしゃく機能の障がい、肢体不自由の他に内部障がい(心臓、呼吸機能、じん臓、膀胱・直腸、小腸、免疫機能)」があります。
 内部障がいのある方は、外見からは分かりにくいために、電車の優先席を利用するときや、障がい者用駐車スペースに停めたいときなどに誤解を受けることがあります。
 このような身体内部に障がいを持つ方への理解を広げるために、「ハート・プラスマーク」の普及が行われています。
 「ハート・プラス」とは、内部障がいを意味する「ハート」マークに思いやりのこころを「プラス」する願いが込められています。
 町田市では、市役所本庁舎、中町第3庁舎、小山市民センター、木曾山崎センター、室内プール、総合体育館、他7施設において、この「ハート・プラスマーク」のある思いやり駐車区画(障がい者用駐車区画)」を整備しています。
 この記述も、らん丈の一般質問を受けて、町田市が対応して作成したものです。

5)「SOSミニレター」の周知徹底を望む
 平成21年第2回定例会では、「SOSミニレター」の周知を望む一般質問を行いました。
 「SOSミニレター」とは、町田市HPにある「子どもの悩み相談」について、という欄で、つぎのように説明されています。
 「子どもの人権 SOSミニレター」いじめ等に関する子どもからの相談に、手紙や電話で人権擁護委員等が対応、ということで、その様式見本がPDFで見られるようになっていますが、これも、らん丈の一般質問を受けて、町田市が対応した結果、掲載されるようになったのです。
 次頁に、ここでご紹介できなかった分も含めて、3年余にわたる一般質問を並べましたので、よかったらご覧下さい