・町田市も地方交付税交付団体になる
・町田市の財政
・単位修得科目
町田市も地方交付税交付団体になる
すでに新聞報道等により御存じの方も多いと思いますが、町田市は今年(2010年)、28年ぶりとなる地方交付税の交付団体へと転じました。
ある新聞は、「交付団体に転落」という見出しで報道していたことからもわかるように、これは、決して称揚されるべきことではありません。
ちなみに、その新聞記事では、つぎのように記しています。「多摩地区の8市が今年度、財源不足を補うために国から配られる普通交付税の交付団体に転じることになった。景気の低迷を受けて法人・個人市民税が減収となり、各自治体は歳出削減や貯金の取り崩しなど厳しい財政運営を迫られている」。(朝日新聞9月3日朝刊)ちなみに、その8市とは、八王子、昭島、町田、小平、日野、国分寺、国立、羽村市のことです。
ここでいう「交付団体」とは、地方交付税を交付される団体のことですが、地方交付税とはどんな税なのでしょうか。地方交付税法では、つぎのように規定しています。「1条 この法律は、地方団体が自主的にその財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能をそこなわずに、その財源の均衡化を図り、及び地方交付税の交付の基準の設定を通じて地方行政の計画的な運営を保障することによつて、地方自治の本旨の実現に資するとともに、地方団体の独立性を強化することを目的とする。」
法律の条文らしく、内容がじつに分かりにくいので、財政学の教科書を開くと、そこではつぎのように説明しています。「地方交付税交付金は、わが国における地方財政調整システムの柱である」(『現代の地方財政』[新版]有斐閣)というのです。つづけて同書では、地方財政調整をつぎのように定義しています。「地方行政のナショナル・ミニマムを確保するために、地方団体間の財政力格差・財政需要格差の縮小を図ることである」。
ごく簡単にいえば、地方行政において、国が最低限必要と認める財政力をもっていない自治体に、国が最低限必要と認められる財政力にいたるように税金を交付する、というものです。
この地方交付税を交付される自治体とは、つぎのような自治体です。「普通交付税は、行政サービスに必要な「基準財政需要額」から、税収などの「基準財政収入額」を引いた差額が充当される。社会福祉費などが膨らむ一方、市民税が落ち込み、国からの「仕送り」が必要となった形だ。」(上掲紙)
では、どうして町田市は、1982年以来28年ぶりに不交付団体から交付団体へと転じたのかといえば、不況により個人市民税の税収の落ち込みが大きかったからです。前年度より、約24億円減収となったのです。ちなみに、法人市民税も対前年度比4億5千万円の減収でした。
そのため、今年度、町田市は国から地方交付税交付金のうち、普通交付税を2千9百30万3千円交付されるのです。
ちなみに、依然として不交付団体となっている多摩地区の自治体は、つぎの7市1町です。武蔵野市、三鷹市、調布市、小金井市、府中市、立川市、多摩市、瑞穂町。
それを全国的にみると、平成21年度と22年度を較べたばあい、両年度とも都道府県では、東京都のみ不交付団体であり、市町村では151から74へとほぼ半減しました。
こうして、町田市は今年度、交付団体となったため、来年度以降も引き続き非常に厳しい財政運営が予測されるところです。
しかし、私は、総合的に判断して、市民生活に資すると思われる予算の減額には、今後とも厳しい判断をしていきたいと考えています。
町田市の財政
前項で指摘したように、28年ぶりに交付団体となった町田市ですが、その財政力はどのような状況になっているのでしょうか。
町田市のホームページによってもその一端を知ることはできます。町田市のホームページトップにある検索項目に「財政比較分析表・歳出比較分析表」と入れてみてください。すると、各年度における財政比較分析表と歳出比較分析表がPDFで掲示されています。
財政比較分析表をみると、重要な指標として、財政力指数があげられます。これは、先ほども出てきた基準財政収入額を基準財政需要額で割った3ヵ年平均の値です。
前項でもふれたように、財政力指数が1.0に満たない自治体は、地方交付税を交付されます。平成22年度は、町田市も財政力が1.0未満になったので、交付団体に転じたのですが、町田市ホームページでは、平成20年度における町田市の財政力までしか表示されていません。それは、1.16であり、1.0以上ですから、当時の町田市は不交付団体であったわけです。町田市と類似した団体(人口および産業構造等により全国の市町村を35のグループに分類した結果、当該団体と同じグループに属する団体)では、8/29という順位ですし、全国市町村平均の財政力指数は0.56であり、東京都市町村平均は0.85だったことをあわせて考えると、町田市は当時財政力が決して劣ってはいなかったことがお分かりいただけることでしょう。
つぎにラスパイレス指数をみてみましょう。これは、国家公務員と町田市職員とを比較した給与水準です。100.0が国家公務員の給与水準です。それによると、町田市は103.3もあり、かなり高い水準にあることがみてとれます。ちなみに、全国市平均は98.4でることからも町田市の高い水準は目を引く数字です。そのため、町田市は、つぎに掲げることを進行中なのです。「平成21年4月から管理職について、人事考課による昇給幅の決定を開始した。平成22年4月からは係長職を、平成24年4月からは全職員をその対象とし、業績・能力の一層の反映を図る。地域手当率はすでに国基準に準拠しているが、諸手当を含めて今後も適宜見直しを検討し、給与の適正化に努める。」というのです。これをもってして万全とはいえないでしょうが、市議会は今後ともこの動きには注視してまいります。
つぎに、経常収支比率をみましょう。これは、各地方公共団体が毎年恒常的に使用できる一般財源のうち、経常的経費(人件費・物件費・扶助費・公債費等)に充てられる比率のことです。経常的経費は、容易に削減が困難な経費とされ、この比率は、財政の弾力性を表す指標として、最も一般的に用いられています。経常収支比率が高まると、それだけ投資的経費に振り向けうる経常一般財源の余裕が乏しくなり、財政が硬直化するとされています。
平成20年度の町田市の経常収支比率は、88.1%であり、全国市町村平均91.8%、東京都市町村平均91.7%と較べると決して悪い数字ではありませんが、町田市の中期経営計画で目標に掲げた数字にはまだまだ至ってはおりません。ちなみに、中期経営計画では、経常収支比率に関しては、つぎのように記しています。「町田市中期経営計画の「行政経営改革プラン」では目標水準を85.4%としており、事業の見直し等による経常経費の縮減など、市財政の改善に向けた取組を進める。」と指摘しています。
引き続いて、人件費についてみると、28.3%であり、これは、類似団体内平均値30.1%よりはかなり良い数字であり、町田市のコメントはつぎのとおりです。「人件費に係る経常収支比率は類似団体内平均を下回っており、人口1人当たりの決算額も類似団体と比較して低い額となっている。これは、人口1人当たりの職員数が他団体より少なく、人件費が低く抑えられていることによる。町田市中期経営計画の「行政経営改革プラン」において職員数の適正な管理や人事給与制度の見直しに取り組んでおり、今後も人件費を適正に保つ。」
財政分析のもう1つの有力な指標である公債費比率は、10.1%であり、これは、東京都市町村平均12.1%と比較しても良好なパフォーマンスであることがわかり、それに関しての町田市のコメントはつぎのとおりです。「公債費に係る経常収支比率は類似団体内平均を下回っており、人口1人当たりの決算額も類似団体と比較して低い額となっている。これは、地方債現在高が少なく、歳出総額に占める公債費の割合が低いためである。また、公営企業債や一部事務組合等の公債費に準ずる費用を加えた値も、類似団体の平均を下回っている。今後の財政需要に対しても公債費への影響を考慮して対応し、適正水準の維持を目指す。」
以上、ごく簡単に、町田市のホームページから、町田市の財政についてみたところですが、まずは御自分の目で確認なさるのが、何よりだと思います。
単位修得科目
たとえば、近代以降の日本で、医学を学ぶことなく医師となった方はかつて一人もいなかったはずですし、これからもそういう医師が現れることはありません。なぜならば、日本において医師となるためには、医師国家試験に合格することが必須の条件ですが、医学を学ぶことなくそれに合格するのは不可能だからです。
あるいは、英語を勉強することなく英語の教師となった者もいません。なぜならば、教師となるためには、まず、大学で教職課程を履修しなければならず、そこでは、英語科目の単位修得が必修ですし、その上で採用試験でも、英語教師志望の場合、英語は必ず受験しなければならない科目であり、それに合格することが必須の条件だからです。
ひるがえって、地方議員となるにあたって、それに先んじて必要とされる学問はあるのでしょうか。その際当然のことながら、医学や英語は不要です。むしろ、英語の場合、「町田市議会申し合わせ事項」第6節発言の53において、つぎのように記されています。「専門用語・外国語は、慣用語または表現の必要上やむを得ない場合のほかは、使用しない」と規定されているように、英語の使用は議会では奨励されておりません。
公職選挙法をみても、立候補に当たって、立候補者が有する学問的知識のことには一切触れていません。
けれどそれは、議員となるために、学問の素養を否定しているのかといえば、もちろんそうでないことはあらためていうまでもないことです。むしろ現今の地方議員は、多様な学問の蓄積を必要とするものであると私は考えております。
では、具体的にはどんな学問分野がそれに該当するのかといえば、つぎに掲げる科目群となるのではないでしょうか。
行政学や地方自治論、日本政治論等の政治学。憲法、行政法、社会保障法、地方自治法、民法等の法学。マクロ経済学、財政学や地方財政論、経済政策論、公共経済学等の経済学。経営管理論、経営組織論、公共経営論等の経営学。以上ここに掲げたのは、代表的な科目群であって、これら以外でも、簿記や公共政策論、社会保障論、社会政策論等、学んでおいたほうがいいと思われる科目は枚挙にいとまがありません。ここに掲げたのは、ほんの一例ということです。
ただ、問題はこれからです。では、上記科目群をマスターしている議員はみな素晴らしく、じつによく働く有能な地方議員であって、これらの科目群を一切学んだことのない地方議員はひとしく劣っているのかといえば、そういうことはいえないとも私は考えています。
では、地方議員にとって学問はいったいどのように位置付けられるのかというはじめの疑問に立ち返ると、私は、それらの学問を身につけておいた方が身につけないよりも尚いいと考えているということです。
たとえば、簿記を学んでいれば、予算書や決算書の数字の羅列にも、迅速に対応することでできるでしょうし、社会保障法を学んでいれば、介護保険や生活保護に対しても適切に対応することができるでしょう。もちろん、それらの学問は図書によって習得することも可能です。簿記にも社会保障法にも、優れた教科書があるからです。
さはさりながら、では、その教科書を私は読んでマスターしたのかといえば、簿記に関しては、教科書を購入はしたものの結局今にいたるまでマスターどころか読んですらいません。
社会保障法は、大学の学部で「社会保障法」という科目を履修したので、単位欲しさに、マスターとまではいきませんが、その教科書を熟読はしました。
ことほどさように、単位修得とは、大きな効力をもつものでして、そのためには、専門書の読了という刻苦を要する作業もたやすく仕遂せてしまうのです。御蔭様で、社会保障法のことはかなり理解できるようになりました。
つまり、私が家族にも半ば呆れられてしまうほどに、大学や大学院で学ぶ理由はここにあるのです。
たしかに、学問は書物を読んでもそれを知ることはできますが、最も手っ取り早い学習法は、人について学ぶことです。
だから、私は51歳にもなって、議会のない日には大学に通うのです。そこで学んだ科目は、らん丈のHPに掲載しておりますので、御興味のある方はこちらをご覧ください。