町田市議会議員 会派「自由民主党」/(一社)落語協会 真打 三遊亭らん丈【公式ウェブサイト】

三遊亭 らん丈

はるかぜ vol.18 2014年10月号市政報告『はるかぜ』

2014.10.01(水)

・2040年までに全国で896市区町村が消滅
・マーケィングの発想を町田市にも
・活発な高齢者は介護リスク減

2040年までに全国で896市区町村が消滅

 民間研究機関「日本創成会議」人口減少問題検討分科会が、さる5月に、成長を続ける21世紀のために「ストップ少子化・地方元気戦略」を発表し、多くの地方自治体関係者に衝撃を与えました。

 その報告によれば、「日本の人口減少は「待ったなし」の状態にある」と書き起され、「眼前に迫っている「不都合な真実」とも言うべき事態を、国民が正確かつ冷静に認識することからすべては始まる」と続けています。ところが、「多くの国民は人口減少の深刻さを十分に認識していない。有効な対策を検討し、果断に実施するためには、「人口減少社会」の実像と「今後の対応」のあり方に関し国民の基本認識の共有を図る必要がある。このため、人口減少の現状と将来の姿を身近な地域のレベルまで示すなど、国民に早急に情報提供する必要がある」と記されています。

 その際重視されるのは、「人口減少に関わる課題は、長期的な視点から考える必要がある。また、社会経済全般に関わることから、子育て支援だけでなく、産業・雇用、国土形成、住宅、地方制度など総合的な取組が不可欠である」ことです。

 それを実現するためには、「若者が結婚し、子どもを産み育てやすい環境づくりのため、全ての政策を集中する。企業の協力は重要な要素」だというのです。

 また、次にみるような政策を提言しています。「新たな政策実施で必要とされる費用は、祖父母による孫の世代への支援をはじめ、高齢者世代から次世代への支援を推進する方針の下で、これまで高齢者に偏りがちであった税制や社会保障制度など高齢者政策の見直し等によって対応すべきである。人口減少の下で多額の債務を抱えることとなる将来世代に負担のツケ回しはすべきではない」。

 その上で、同報告では4つの論点を提示しており、その第4の論点では、次のように指摘しています。「人口減少は、地方だけの問題であって、都市部は人口も減っていないし、大丈夫ではないか。⇒都市部(東京圏)も近い将来本格的な人口減少期に入る。地方の人口が消滅すれば、都市部への人口流入がなくなり、いずれ都市部も衰退する」というのです。

 提言は、具体的な施策も提示しており、たとえば、次にみる指摘があります。

 子育ての支援として、「ア.「待機児童」の早期解消等(「待機児童解消」の加速化)依然として、都市部を中心に「待機児童」の問題があり、これをできる限り早期に解消する必要がある。地方自治体は、株式会社を含む多様な事業者の参入を進めるとともに、保育士の確保に取り組むことが求められる」というものです。これに関しては、町田市は全国に先駆けて、「20年間期間限定認可保育所」の整備に取り組んでいるところです。

 衝撃的なのは、次の報告です。2010年から2040年までの間に「20~39歳の女性人口」が5割以下に減少する自治体数は、現在の推計に比べ大幅に増加し、896自治体、全体の49.8%にも上ると予測し、これらを「消滅可能性都市」としました。

 都道府県別に見ると、こうした市町村が8割以上となるのが、青森県、岩手県、秋田県、山形県、島根県の5県に上ります。同様に、5割以上となると24道県にも達する。さらに、896自治体のうち、2040年時点で人口が1万人を切る市町村を見てみると、523自治体、全体の29.1%に上る。これらは、このままでは消滅可能性が高いと言わざるをえないというのです。

 東京都も例外ではなく、豊島区では、2010年から2040年までに若年女性(20-39歳)の変化率が-50.8%となり、2040年に若年女性が50%以上減少し、人口が1万人以上の市区町村(373市区町村)のうちの一つに数えられていることです。

 豊島区といえば、JR東日本エリアでは、新宿駅に次いで2番目の乗降客を擁する池袋駅(町田駅は28位、小田急線では2位:2013年度)がある日本でも有数の繁華街が区内にあるにもかかわらず、若年女性が半分以上も減ってしまうというのですから。若年女性が減れば、当然のことながら、出生数も減るのです。

 ひるがえって町田市は、同会議の資料ではどうなっているのでしょうか。若年女性変化率は-20.3%ですから、豊島区よりかなりよい数字となっており、これは、多摩地区の26市中6位ですので、上位に位置しています。

 これらについて、同会議座長の増田寛也(元総務大臣)は、次のように指摘しています。 「昔は結婚して子どもを生み、家族を守るという価値観があったが、多様化してきた。出産か仕事かを迫られる働き方の問題や、当人の意識の問題もある。一方で、「結婚したい」「子どもを持ちたい」と願う若者も多い。こうした出産を阻む社会的、経済的な要因を取り除かなくてはいけない。(中略)東京も2020年ごろから人口が減り、若者と高齢者のバランスが悪くなる。(中略)自治体も、移転してきた企業で自らの能力を向上させたいという意欲のある社員のため、例えば、地方大学で夜間でも学べる場を増やすことも必要だ」。

 このように、東京にあっても、人口減少社会は、喫緊の課題であることがわかるのです。


マーケティングの発想を町田市にも

 昭和30年に日本生産性本部のアメリカ視察団が企業活動の視察を終えたのち帰国し、その団長をつとめた経済団体連合会の石坂泰三会長が、「アメリカにはマーケティングというものがある。わが国もこれからはマーケティングを重視すべきである」と発言しました。

 それからすでに59年も経ているので、いまさらながらとは思いますが、新たな視角から「マーケティング(marketing)」を今回は採り上げたいと思います。

 そもそも、マーケティングとはどんな概念なのでしょうか。marketに動名詞をつくるingをくわえたものがmarketingであり、マーケットは、もはや日本語となっていますから説明するまでもないでしょうが、ここでいうmarketingとは、文字どおり市場から派生した経済用語です。マーケティングには、わが国でもあまたの教科書がありますが、野口智雄(早大)教授のものによると、「組織による消費者ニーズ充足のための創造的適応活動(※1)」 が、マーケティングです。ただ、これでは、木で鼻をくくったような説明ですので、マーケティングと似た概念に、セリング(selling)がありますから、それと比較してみましょう。

 「出来上がってしまった商品や仕入れてしまった商品をなんとかして売りさばいてしまおうという発想がセリングという言葉に込められている」のですが、「マーケティングは“作ったものを売る”という発想ではなく、市場(market)の意向を察知して“売れるものを作り、販売する”という発想が概念の基底部分に位置づけられている」というのです(※2)

  もっとも、わたしにしたところで真の意味での「マーケティング」を2000年4月までは、知らなかったのです。立教の経済学部に編入学し、その年度に、「マーケティング論」を履修して、はじめてこの概念を知ったのでした。それにくわえて、早稲田に入学しても再び、「マーケティング論」を受講したのですから、よほどこの科目が気に入ったのでしょう。いまや、マーケティングは、戦略論とともに経営学の花形といってもよく、「マーケティング学科」が、経営学部や商学部に設置されています。

 その「マーケティング論」で繰り返し強調していたのは、「市場創造」と「市場調整」でした。市場創造とは、企業の利益追求の視点から考えた場合には、新規需要をいかに獲得するかという課題を導きだすものとなります。新規需要を企業が獲得するためには、市場構成者である顧客の注目を集め、期待に応え、満足を継続的に提供する必要があります。

 一方、市場調整とは、顧客の要望と企業目標を実現するために経営資源や販売技法などの使用可能な手段の適切な組み合わせの考案や調整を図る活動です。市場調整は、企業の実践的な活動のレベルで企業と市場の接点を管理する方法に指針を与える概念として位置づけることができ、一般的には、“マーケティング・ミックス(marketing mix)”とよばれています。

 ところで、昭和48年のオイルショックの前後において日本におけるマーケティングは、変化を見せ始めました。それまでの企業の成長第一主義的な販売方法に対して様々な角度から批判が加えられたのです。まず、大気汚染や河川汚染などの公害問題に対してマスコミや市民からの批判が企業に向けられました。また、欠陥商品の販売や販売価格の不当な操作が明るみに出ることによって、消費者の不買運動などのコンシューマリズムが台頭したのもこの頃です。

 こうして、企業経営に企業と消費者以外の社会の主体に対して十分な配慮が求められるようになったために、マーケティングも社会的な要求に応えることを念頭に置いた、ソーシャル・マーケティングが提唱されるようになったのです。

 このような背景のもと、すべての組織が、無意識であるにせよマーケティング機能を果たすようになりました。たとえば、選挙では候補者が、大学の学生募集では高等教育機関が、募金活動ではその主張が販売されており、マーケティングはもはや社会的活動にまでその適用領域を広げているのです。たとえば、警察のイメージアップのためのキャンペーンや、議会に禁煙を訴える集団の活動などの社会的な領域にもマーケティングの技法が適用できるとしたのです。

 このように、ソーシャル・マーケティングは、行為主体を営利企業に限定せず、非営利組織にまで拡大しようとするものです。それは、大学や病院、教会、役所、慈善団体等も競争があったり、顧客の減少に悩んでいたり、効率的な組織運営を模索しているからです。非営利組織が抱えるこれらの問題に対処するにはマーケティングが有効であるため、適用領域を非営利組織にまで拡大してもよいのではないかという考えがこの基礎にあります。

 いかがでしょうか。わたしは、非営利組織である町田市も、もっとマーケティングを活用して市民に資する組織にすべきだと思うのです。

(※1)野口智雄『マーケティングの基本』(日経文庫、2005年)
(※2)有馬賢治『バリュー・クリエーション・マーケティング』(税理経理協会、1998年)


活発な高齢者は介護リスク減

 日本の女性の平均寿命は昨年、過去最高の86.61歳となり、2年連続の世界一を達成しました。男性も、はじめて80歳を超え、80.21歳となったことを、厚生労働省がさる7月31日に発表しました。

 ひるがえって町田市の平均寿命は、平成22年のものですが、男性が81.1歳、女性は87.1歳ですから、男女ともに町田市民の方が、全国平均より長寿であることがわかります。

 日本人の平均寿命は、昭和22年では男性が50.06歳、女性が53.96歳だったことを思えば、戦後飛躍的に伸びたことがよくわかります。

 長寿も健康があってこそその恵みを享受できるのですが、その指標である健康寿命をみると、男性は70.42歳、女性は73.62歳です。この健康寿命を、今後いかにして伸ばすかが課題とされています。

 それは、自立して生活できることを意味しますが、東京医科歯科大学と千葉大学などのグループがまとめたところによると、運動やボランティアなど多彩な社会活動に参加しているお年寄りほど、要介護になるリスクが低くなるという研究成果をまとめ、米科学誌『プラスワン』に発表しました。

 それによると、同グループは、健康な高齢者12,951人に、町内会、趣味、運動、宗教、業界(農協や商工会)、ボランティア、政治、市民活動の8種類のうちどんな活動をしているかを尋ね健康状態を追跡したのです。

 4年後には、そのうち1,528人が、要介護の認定を受けていました。要介護になるリスクは、社会活動に何も参加していない人に比べ、どれか1種類に参加している人は17%、2種類の人は28%、3種類以上は43%低かったというのです。

 個々の活動では、運動が34%減、趣味が25%減、町内会活動が15%減と、リスクを減らす効果が高かったのです。研究グループの近藤克則(千葉大学)教授は、「お年寄りの社会活動の参加の重要性が確認できた」と指摘していましたが、重要な研究成果だと思い、ご紹介させていただきました。