・政治とはなにか
・今、そこにある危機
・平成27年度施政方針
政治とはなにか
わたしは町田市議会議員をつとめておりますので、世間でいうところの政治家の、一員ということになります。
ここで、あらためて「政治」とはなにかを、考えてみたいと思います。
そこで、岩波書店の『広辞苑』で「政治」を引くと、次のように記されています。1、まつりごと。2、(politics;government)権力の行使、権力の獲得・維持にかかわる現象。主として国家の統治作用にかかわるものであるが、それ以外の社会集団および集団間にもこの概念は適用できる。いかにも広辞苑らしい、語釈ですね。
同様に三省堂の『大辞林』では、1、統治者・為政者が民に施す施策。まつりごと。2、 国家およびその権力作用にかかわる人間の諸活動。広義には、諸権力・諸集団の間に生じる利害の対立などを調整することにもいう。
いずれの語釈も、隔靴掻痒の感が拭えません。この語釈では、政治の最も基本的なことにはふれられていないと、思うのです。
見方を変えて、政治は、漢字でなりたっているという視点から考えると、碩学、白川静による『常用字解』で、「政」をみると、政とは征服した人びとに税を出すことをむちで強制することをいう、との解釈が記されています。「治」も、白川静によれば、水を治める儀礼をいう字であろう。しばしば大河が氾濫し、洪水の被害に苦しめられた中国においては、水を治めることは政治上の重要な仕事であったので、「世を治めること、まつりごと、政治」の意味となった、と記されています。
この語釈でも、政治の一面を語ってはいますが、やはり最も基本的なことには、ふれられてはいません。
政治をもっとシンプルに考えると、異なる意見が生じたときに「政治」がはじめてうまれることに、留意すべきです。たとえば、無人島に漂着し、そこでひとりで住んでいる限り、政治はいりません。決断する場合にすべてのことを、自分が選択し決めることが出来るからです。しかし、そこに、だれかひとりでも加わると、政治を導入しないとものごとが決められなくなります。つまり、どちらの意見を優先するか、という問題が生じるのです。ここが、政治の要諦です。これに関して、待鳥聡史(京都大学)教授は、「政治とは、様々な意見の対立があるなかで、どれを選ぶかを決めるための争い」(朝日新聞2014.11.18)と指摘しています。
これこそ、わたしが政治家となってから日々実感している「政治」です。たとえば、大きな政府か小さな政府か、あるいは、景気対策か構造改革か、いまを重視するのか将来を重視するのか、といった対立がありますが、そのどちらかを選ぶのが政治だと、わたしは考えているのです。
最後にもう一度、国語辞典にご登場願うと、三省堂の『新明解国語辞典』では、「政治家」を次のように説明しています。「国会議員・地方議会議員など、自分の政見を直接政策の上に反映させることの出来る立場にある人」ということになります。そのうえで、同じ三省堂の『国語辞典』では、「政治」を次のように説明しています。「社会を住みやすくするために、国や地方の大きな方針を決めて実行すること」。
今、そこにある危機
(1)いつの時代でも特有の問題があった
おそらく人は、いつの時代でも、その時代特有の問題があるなかを、けなげにも生き抜いてきたのだと思います。春風駘蕩として、一片の悩みや社会的な不安を覚えることもなくその人生を全うされた方は、皆無といってもいいでしょう。それは、古代でも中世でも、もちろん近代でも時代を問わず、人はつねに、問題がある中を生きてきたのです。たとえば、中世のヨーロッパであれば、ペストの脅威にいかに立ち向かうかが大きな問題でした。わが国でいえば、戦前まで結核は、国民病とまでいわれていました。
それでは、こんにちの日本が直面する特有の問題は、なんでしょうか。それを、「ミスター外交」との異名もある、藪中三十二(元外務事務次官、立命館大学特別招聘教授)は、『国家の命運』(新潮社)にて、デモグラフィー(人口統計)だと指摘しました。
(2)問題は、人口減少ではなく人口動態の変化
わが国の人口は、政府の見解によれば2008年から減り始めたといわれています。それを、総務省は、次のように記しています。「2008年が、人口が継続して減少する社会の始まりの年~人口減少社会「元年」と言えそうなのです」。
たしかに、人口の減少をなんらの問題なし、とは考えにくいことです。人口がどんどん減って、それを素晴らしいとは、いいかねるからです。
それでは、どのようにわが国の人口は、減っていくのでしょうか。次の図が、人口減少の推移をあらわしています。
上図のような推移で、わが国の人口は減少していくのです。ここで、注意していただきたいのが、棒グラフが3色に色分けされていることです。上段が赤色で、これは65歳以上の老年人口、中段の青色が15~64歳の生産年齢人口、下段の緑色が14歳以下の年少人口です。すると、老年人口は毎年確実に増えているにもかかわらず、生産年齢人口や年少人口は逆に減っていくことに気づかされるでしょう。
それを国勢調査でみると、2010年のそれでは、年少人口が1680万3千人で、前回の国勢調査にくらべて4.1%減っています。生産年齢人口も、8103万2千人で前回の国勢調査より3.6%減っています。それに対して、老年人口は、2924万6千人で前回の国勢調査より13.9%も増えているのです。
この流れが、今後、加速されるのです。このように、たんに、人口が減るのが問題ではなく、人口動態の変化、つまり、労働人口の減少こそが、わが国の「今、そこにある危機だ」と藪中さんは、指摘しているのです。
(3)わが国は、世界一の長寿国
それでは、どうして、わが国は、今後、老年人口が増えていくのでしょうか。それは、簡単なことで、日本は世界一の長寿国だからです。これは、いうまでもなく、素晴らしいことです。これを否定的にみる理由は、ありません。短命より長命のほうが、いいに決まっているからです。
問題は、それを支える労働人口が高齢者ほどには、増えていかないことなのです。
ここで、もうひとつの問題は、その解決法は、どこにもないということなのです。今までの日本は、多くの面で、欧米に追随していましたから、トップを走る欧米がそこで生まれた問題をすでに解決していたのです。
ところが、人口減少と少子高齢化という問題は、日本が世界のトップを走っているため、先行する解法はどこにも存在しないのです。
みずからこの解を見出さないかぎり、だれもそれを教えてはくれません。そこで、われわれは、特定のだれかではなく、問題をみんなで共有し、その解決に向けて努力するしかないことをもう一度、肝に銘じるべきでしょう。
(4)大学の役割
そこで重要視されるのが、大学の存在です。大学は学問の場ですが、そこは、知の集合体でもあるのです。時あたかも政府の教育再生実行会議(座長=鎌田薫早稲田大学総長)は、今年(2015年)3月4日に、大学を若者だけでなく、社会人など多様な主体が学ぶ場に変えるように促す提言をまとめ、安倍晋三首相に手渡しました。
その提言では、今後は大学卒業までに身につけた能力だけでは社会で活躍できないと指摘しています。そのために、社会人や女性、高齢者など誰もが、都市でも地方でも学び続けることができるよう、大学教育を充実させるよう求めています。
こうして、これからの大学は、社会問題の解決にむけて、積極的に関与する教育機関へと、その役割を広げようとしていかなければなりません。
平成27年度施政方針
町田市長は例年、第1回町田市議会定例会、いわゆる3月議会において、施政方針を本会議場にて発表しています。
それは過去のものも含めて、町田市のHPでも見ることができるので、ご興味のある方は、是非ご覧ください。URLは、こちらです。【https://www.city.machida.tokyo.jp/shisei/shityoushitu/hoshin/index.html】
今回は、その平成27年度版を、採り上げます。
(1)市政を取り巻く状況
この誌面の『今、そこにある危機』でもふれている人口問題から、市長は施政方針の稿を起こしています。それによれば、町田市の人口減少は、国全体の動きより遅れ、2020年頃から始まり、2030年には、市の総人口にしめる後期高齢者の割合が、現在の11.2%から、17.5%まで上昇すると推計しています。
(2)地方法人税
国が実施する地方創生のための新たな戦略には、地方分権の流れに逆行する部分があるとの指摘があります。その一つが、地方法人税だというのです。これは、「受益と負担という地方税の原則に反し、地方の財源を国税化することには、正当性、合理性がありません」とまで、市長は踏み込んでいます。
この地方法人税が2014年度に創設されたために、町田市の税収は前年比で、減収となってしまいました。
(3)堅実な行財政運営を続けてきても財政状況が悪化
町田市は、「これまで住宅都市として、安定した個人市民税収入を財源の中心として、堅実な行財政運営を続けてきました」。また、過去のハコモノ建設による負の遺産があるわけでも、第三セクターの累積赤字があるわけでもありませんが、「現在の状況は、過去の財政状況の悪化とは根本的に状況が異なると」いうのです。そのため、「日本の各都市は、少子高齢化などの社会状況の変化により、以前に見られたような歳出削減だけの財政再建はできない時代」になったというのです。
その結果、「2025年度までの歳入の予測においても、生産年齢人口の減少の影響が個人市民税の税収減という形で顕在化してくることが予測され」るのです。
また、高齢化の進展にともない、税収は減少するのにもかかわらず、社会保障等の行政需要は拡大します。こうして、「社会保障関係経費の大幅な増加と税収の減少といった状況はいわば構造的収支不足が到来するといえ」るのです。「しかしこれまでの行政サービス水準を維持しながらの経費の節減も限界の状況にあります。また経費節減するだけでは、将来の夢は描けません」と、市長が訴えるのも宜なる哉です。
(4)2015年度は「町田の未来を育てる」年
- 「地域社会づくりのプロジェクト」
市民と行政の協働による新たな地域社会づくりが、軌道にのってきたようです。「地区協議会」が、小山、町田第二、鶴川、木曽、相原の5地区に設立され、玉川学園・南大谷、南、忠生の3地区でも設立に向けた準備が進んでいます。 - 「団地再生のプロジェクト」
旧本町田中学校と旧本町田西小学校の跡地に私立学校を誘致します。 - 「町田駅周辺のプロジェクト」
新たな文化芸術ホールの基本構想策定に着手し、それは、「町田市民の誇りとなるようなホール」を目指しているのです。 - 「みどりのプロジェクト」
「薬師池公園を町田の一大観光拠点にしたい」ため、この一帯を町田薬師池公園四季彩の杜として、整備するのです。 - 「基幹交通機能のプロジェクト」
多摩都市モノレールの町田方面への延伸と小田急多摩線延伸には、引き続き、各事業者に強力に訴えていきます。 - 新たな資源循環型施設整備の着実な推進
(5)2015年度の主要な施策
- 2014年9月に、芹ヶ谷公園に常設の冒険遊び場がオープンしましたが、2015年度には、鶴川地区に新たな常設の冒険遊び場を整備します。
- 第6期町田市介護保険事業計画がスタート
- 2020年東京オリンピック・パラリンピック地招致に向けて、「(仮称)キャンプ地招致推進市民会議」を発足させます。
- 鶴間公園を野津田、薬師池、芹ヶ谷に続く、“にぎわいの森”として効果的は再整備を行うため、南町田駅周辺整備の事業計画を策定します。
以上の施策をおこなうため、2015年度の当初予算案の規模は、一般会計は1,428億3,030万1千円、特別会計は1,180億1,494万1千円、合計2,608億4,524万2千円となっており、これは、昨年度の当初予算と6月補正予算とを合わせた額とくらべ、約4.1%の増額となっています。