7月18日 熊本県、視察項目【UXプロジェクトについて】
7月19日 熊本市、視察項目【災害時の避難所運営について 】
7月19日 福岡市、視察項目【観光コンベンションビューローについて】
7月20日 倉敷市、視察項目【あちてらす倉敷について】
【熊本県】7月18日
1、UXプロジェクトについて
(1)UXプロジェクトの事業背景について
「UX」の「U」とは、「YOU」、「結う」、「熊本県の熊(ゆう)」を、表わしている。
「Ⅹ」とは、CROSSとこれから起こるイノベーションに期待する「未知」を表わしている。
熊本県では、熊本県がもつライフサイエンス分野の強みを活かした、新たな産業の創出を目指す、「UXプロジェクト」を推進している。
「UXプロジェクト」とは、半導体、自動車関連産業に続く、産業の「第3の柱」の形成を目指すプロジェクトである。
熊本空港周辺地域を拠点に、熊本の強みであるライフサイエンス分野を中心として、ビジネス創出の好循環形成を目指して「UXプロジェクト」を推進する。
このプロジェクトでは、『世界中の人々が、自分らしく最期まで「健康で」「楽しく」「美しく」いられる生活』を実現するための新たなビジネスを、熊本から生み出すことを目指し、考え方に共感し、ともに一歩を踏み出す仲間を求めている。
(2)UXプロジェクトの効果
全国からアイデアのビジネス化や起業を目指す方々が集い、協業することで賑わいを創出する。
そこで、集まった方々のアイデアをクロスしてビジネスを継続的に創出できるように熊本県を中心とした「チーム熊本」が全力でサポートする。
(3)今後のUXプロジェクトの課題
半導体、自動車関連産業に続く、産業の「第3の柱」の創出が未だ達成できておらず、熊本県の持続的発展のためのエコシステムの形成という遠大な目標に挑戦しているところである。
総体として、大きな賑わいの創出にも成功していない。したがって、OI(オープンイノベーション)を誘発する場がない。
その要因として、これらを牽引する企業、研究機関がないことが挙げられる。
【熊本市】7月19日
1、災害時の避難所運営について
(1)熊本地震発災時の避難所運営について
避難者数:熊本地震時の最大避難者数は、本震翌日の2016年4月17日に110,750人に達した。
開設した避難所数:最大避難所数は、本震5日後の4月21日に267か所を開設。
その際の課題として、下記のことが指摘できる。
・避難所の数不足
・情報管理の不備、不徹底
・備蓄、支援物資の有効な配布
・有効な被災者支援とともに受援態勢の不備
前震、本震ともに夜間あるいは未明に発災したため、避難所開設の際、避難所の鍵を持っている方が速やかに避難所に来られなかったため、スムーズな避難所開設に至らなかった箇所もあった。
(2)熊本地震発災後の避難所運営について(熊本地震を経験して工夫していること等)
熊本地震の教訓を踏まえ、地域防災計画の改定や校区防災連絡会の設立等に取り組んだ。併せて、各避難所において、避難所運営委員会を立ち上げ、避難所担当職員3名を配置し、地域や施設管理者と連携し、避難所の開設・運営を円滑に対応できるよう工夫を行った。
ところが、半数の避難者は、避難所運営にかかわることなく、お客様状態にあったので、その避難者には運営にかかわるように改善することが大事である。
(3)今後の避難所運営における課題について
・避難所を開設・運営する「避難所運営委員会」は、必要な組織の80%以上設立しており、今後は、各委員会による避難所運営マニュアルの作成を促進する必要がある。
・各避難所に避難所担当職員(市職員)を3名配置しており、施設管理者や地域と連携し、円滑な避難所開設・運営が可能となるよう、避難所開設訓練等を実施するとともにより実働的なマニュアルに改訂していく必要がある。そのため、3名の避難所担当職員は、固定化している。
・高齢者や障がい者に配慮し、段差解消や車椅子使用者用トイレの設置、トイレの洋式化といったバリアフリー化を推進するなどして避難所の機能強化に努める必要がある。
・災害発生時に市民や観光客を適切に避難所へ誘導するため、「熊本市防災情報ポータル」情報を発信することとしており、今後は、関係機関と連携し、周知啓発に努めることとしている。
・今後も民間との協定締結を推進し、避難所の確保を進めていく必要がある。
・ペット同伴避難場所について、現在、2か所を確保しているが、各区に1か所は設置できるよう努めていきたい。
・自助、公助、共助の三者が一体となれる関係の構築を目指し、地震に機動的に対応したい。
【福岡市】7月19日
1、観光コンベンションビューローについて
(1)観光・MICEに取り組む意義 福岡市は、2千年前から中国大陸との交流窓口の役割を果たし、海外との交流の中で大きな発展を遂げてきた。その長い交流の歴史の中で、海外の文化と融合しながら、あたたかいもてなしの心や熱い人情、博多祇園山笠に代表される祭りや伝統文化など、福岡独自の文化、個性を育んできた。
近年は、世界から多くの人々が集まり交流する都市として発展してきたが、新型コロナウイルス感染症(以下、「コロナ」という)により、人流は止まり、地域経済へ大きな影響を与えることになった。
第3次産業が9割を占める福岡市において、コロナからの経済の回復とさらなる発展、都市成長を図るためには、交流人口の増加による経済の活性化が必要である。特に、観光MICE産業による経済活動は、その裾野が広く、都市全体が成長していく原動力になることができる。 都市の成長エンジンである交流を推進するため、観光・MICE施策を市民・地域・企業・行政が一体となって積極的に展開し、福岡市、九州の経済発展を牽引するとともに、魅力にあふれ、住む人も誇りを持てるまちを創造し、持続的な都市の発展と成長に寄与していく。
(2)観光・MICE推進プログラムの位置づけ
平成30年9月に制定された福岡市観光振興条例に定める「市長が講ずる施策」を踏まえ、観光・MICEの取組の方向性を示した「観光・MICE推進プログラム(以下、「プログラム」という。)」を策定し、観光・MICE施策を推進していく。なお、この福岡市観光振興条例は、議員提出議案として出されたものであることは興味深い。
(3)福岡市の観光・MICEを取り巻く現状 福岡市においても、プログラム策定時(令和元年度)と比較し、コロナの影響によりインバウンド・国内観光需要が著しく減少し、他方ではマイクロツーリズムやワーケーション等の観光需要が注目されるようになった。
また、世界的に観光の持続可能性への関心の高止まりなどもあり、観光・MICEにおける環境は大きく変化している。
それを、以下に列挙する。
【観光関連】
・コロナによる移動制限やニーズの変化により、近場の観光を楽しむマイクロツーリズムが普及した。
・ホテル等の宿泊施設の新規開設が続いており、観光客の受け入れ態勢は強化されている。
・都市空間のアップデート(天神ビッグバン等)により、今後、ハイクラスホテル客室数の増加が期待される。
・国際情勢やコロナの影響により、インバウンド市場の回復に一部不透明なところがある。
【MICE関連】
・コロナの感染拡大防止として、MICEにおいてはハイブリッド開催型が普及した。
・令和5年度の世界水泳選手権大会の開催による欧米豪からの観光客の増加と経済効果が期待される。
・マリンメッセ福岡B館の供用開始や民間のMICE施設の増加により、機会損失の解消が図られている。
・国際金融機能誘致の取組による企業ミーティング開催などの気運が高まっていく。
【インフラ関連】 ・福岡空港の第2滑走路の供用(令和6年度予定)により、来訪者の増加が期待される。
・地下鉄七隈線の延伸開業(令和5年3月)により市内回遊の利便性が向上する。
(4)コロナからの回復から持続可能な観光・MICEへ
1)コロナからの回復に向けた取組
地域経済のコロナからの回復とさらなる活性化に向けて、国内外へのプロモーションや新たなコンテンツ造成などにより誘客を促進し、観光消費の拡大に取り組む。特に福岡市の強みであるMICEにおいては、比較的回復が早く集客性のある展示会などのMICE誘致に取り組むことで、市内産業への経済波及効果を高める。
また、観光関連事業者においては、休業や一時的な事業縮小などによる従事者の減少等により、回復に向かう需要に対応できていない事業者も見受けられることから、観光関連事業者の生産性向上に向けた取組などを進める。
2)持続可能な観光・MICEへの取組~国際的な観光・MICE都市を目指して~
近年、観光・MICEを取り巻く環境は大きく変容し、地域の歴史や伝統文化、自然環境に配慮しながら、観光による地域経済の活性化につなげる持続可能(サスティナブル)な観光地域づくりが求められている。 福岡市においても、九州のゲートウェイ都市としての特性やこれまで受け継がれてきた地域資源等を活かした観光・MICE振興を推進することで、地域経済の活性化を図り、その取組を通して、世界共通の目標であるSDGsや市民生活の質の向上に貢献するとともに、国際観光・MICE都市としての目的地(グローバル・デスティネーション)となることを目指し、都市のプレゼンス向上を図る。
福岡市においては、観光振興に関わるステークホルダーの取りまとめ役として、福岡観光コンベンションビューローが牽引し、観光関連事業者や地域・市民との連携を強化しながら、観光地域づくりを推進していく、ということである。
【倉敷市】7月20日
1、あちてらす倉敷について
(1)倉敷市の概要(産業)
水島臨海工業地帯に位置し、石油精製、鉄鋼、自動車等で形成される日本有数の工業地帯である。
その製造品出荷額は、約3兆5千億円ある(令和元年度)。
また、繊維のまち児島もあわせ持つ。古くから綿花が栽培され、木綿織りや製法技術が発達している。国産ジーンズ発祥の地でもある。学生服、帆布は国内のシェア70%を占める。
(2)倉敷市の概要(観光)
重要な観光資源として、瀬戸大橋・鷲羽山があり、瀬戸大橋は、鉄道道路併用橋としては世界最長。吊り橋、斜張橋、トラス橋等の世界最大級の橋梁が連なる景色は壮観であり、年間観客数は100万人を超える。
倉敷美観地区も見逃せない。白壁の町並みと大原美術館などの洋風建築が調和した、歴史的景観を形成し、全国に先駆けて、町並み保存に取り組んだ地区であり、年間300万人以上が訪れる県内最大の観光地である。
(2)中心市街地の課題 倉敷駅北の大型商業施設(年間1,000万人以上)や倉敷美観地区(年間300万人以上)の賑わいが、市街地中心にある既存商店街等に波及していない。
そこで、倉敷市阿知3丁目東地区市街地再開発により、新たな「まち」をつくり、賑わいの拠点となることで、回遊促進効果が期待された。
(3)倉敷市阿知3丁目東地区第一種市街地再開発事業(経緯)
平成6年4月 まちづくり協議会設立
平成14年7月 準備組合設立
平成19年4月 都市計画決定
平成20年6月 特定業務代行の決定
平成29年8月 都市計画決定の変更(街区・道路幅員の変更)
平成30年3月 再開発組合設立認可公告
平成31年3月 権利変換計画認可公告
令和元年6月 解体工事着手
令和2年7月 再開発地区の愛称「あちてらす倉敷」に決定
令和3年7月 都市計画決定の変更(公共空地の拡大)
令和3年10月 グランドオープン
(4)倉敷市阿知3丁目東地区第一種市街地再開発事業(概要)
区域面積:約1.7ha
施行者:倉敷市阿知3丁目東地区市街地再開発組合
権利者数(組合設立時点):土地所有者35名、借地権者38名
事業推進コンサルタント:株式会社アール・アイ・エー
施行期間:平成30年3月~令和4年度
事業費:16,151百万円
補助金:6,67百万円(うち国費3,329百万円)
(5)エリアマネジメント(課題)
再開発エリアを衰退させないためには、地区内事業者が一体となって、環境維持や賑わい創出活動を継続することが重要。
組織作りにおいては、再開発前の事業者・テナントがほぼ転出し、ほとんどが他地区からの出店者であるため、一体となってエリア価値を向上する意識が薄い。
再開発前の事業者が転出した理由は、再開発したことにより家賃が大幅に上がったため、その家賃を負担できなくなってしまったことによる。
(6)エリアマネジメント(今後の課題)
賑わいの定着 協議会員も設立の8者から20者まで増加し、情報発信やイベントなど各部会に分かれて活動が出来るようになったので、もっとPRやイベントを増やし、「あちてらす倉敷」の認知度を高めたい。
来訪者向けや、近隣住民、オフィスワーカー向けのイベントなど、多種多様なイベントを実施することにより、賑わいを定着させたい。
【全体を通じての所感】
今回の視察では、熊本県及び福岡市が視察先となっていたが、熊本県及び福岡市は、町田市とくらべて予算規模があまりに違い過ぎて、町田市にとって参考になるものとそうでないものと、かなりはっきり分かれていた。 また、福岡市では、観光コンベンションビューローを視察したが、これも、町田市とは観光事情があまりに異なるので、参考にしにくいものがあった。