11月14日 和歌山市和歌山市民図書館、視察項目【1、和歌山市民図書館が指定管理者に移行した件について 2、同図書館が指定管理者に管理されることでどのような変化が来たしたのか】
1、和歌山市民図書館が指定管理者に移行した件について
1)指定管理者に移行した経緯
和歌山市民図書館は、1981年、和歌山市湊本町に開館しました。それが、築年数が30年を過ぎて耐震改修工事や施設設備の修繕・更新が必要になってきたこと、蔵書収蔵能力の確保や閲覧席数拡張の必要性が増したこと、また時代とともに多様化する市民ニーズへの対応、バリアフリーやアクセス向上などの課題が生じ、2015年に和歌山市と南海電気鉄道による市民図書館の南海和歌山市駅へ移転することを含む南海和歌山市駅活性化構想が発表され、2016年、和歌山市民図書館基本計画が策定されました。
2)和歌山市民図書館基本計画
基本計画では、新しい図書館のあり方として、1,すべての市民が、利用しやすい図書館、2,情報拠点として、資料の充実、3,市民の学びと、課題解決の支援、4,郷土の歴史と文化の継承、5,人と人とのつながりを育む図書館、6,まちの拠点となる図書館を目指し、図書館サービスのさらなる向上を図るものとしています。
3)指定管理者募集の概要
提案募集にあたっての基本的事項
【新しい図書館のイメージ】
まちづくりの核として機能する和歌山市の新たな文化教養、賑わいの拠点
【新しい図書館の目指すもの】
1、まちの賑わいの拠点となる図書館
2、すべての市民が利用しやすく、居心地よく滞在できる図書館
3、新たな利用者を呼び込む
4、郷土の歴史と文化を継承する
5、市民の学びと課題解決の支援を行う
6、まち歩きの拠点
4)指定管理に係る基本協定締結までの経緯
2017年6月、和歌山市民図書館条例の改正(指定管理者制度の導入)
2017年10月、市民図書館指定管理者候補者の選定
2017年12月、2者が応募したが、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社に、指定管理者の指定の議決
指定管理料は、2020~2023年度は各333,750千円で、この額は、指定管理者に移行する前とほぼ同じ額だそうです。
5)新・旧図書館の比較について
図書館のスペック:旧市民図書館 新市民図書館
会館日数 288日(休館日:金)365日 1.3倍
開館時間月~木10:00~20:00 9:00~21:00(全日) 1.2倍
土日祝10:00~18:00
収蔵能力 45万冊 60万冊 1.3倍
閲覧席数 200席 525席 2.6倍
学習席 24席 145席 6.0倍
図書館利用状況:2018年度旧館 2020年度新館
来館者数 171,339人 663,496人 3.08倍
図書貸出冊数 483,363冊 578,938冊 1.20倍
図書貸出数 109,815人 142,333人 1.30倍
2、新和歌山市民図書館施設構成
1F 一般図書、カフェテリア、書店エリア、観光案内、物産販売
M2F 自転車駐車場 収容台数800台
2F 一般図書、ライフスタイルジャンル、有吉佐和子文庫(地元作家を身近に感じてもらえる機会の提供)、ティーンズ、多目的ルーム(使用しない時は学習室として開放)、閲覧室(「居心地の良い空間」を提供し、寛げ、静かに集中できる環境を提供する)
3F 一般図書、レファレンス、郷土資料、移民資料室(利用者が移民資料や郷土資料に触れられる機会を提供する)、学習室(利用者が集中して学習・調査研究ができるように、扉で区切られた学習室1と、電源席を配置し、持ち込みパソコンを利用した学習ができる学習室2を設置する)、テラス席(学習の息抜きや仲間とコミュニケーションが取れるテラス席を配置する。観葉植物や緑を充実させ、癒しと開放感を演出する)
4F こどもとしょかん、プレイスペース(室内遊具を設置したプレイスペース、「遊び」の中から多様な学びと体験を提供する)、地域子育て支援拠点施設、えほんの山(読み聞かせやイベントができるステージ、山の中には本のどうくつもある)、もぐもぐスペース(子育て世代の親同士がコミュニケーションを取れるフリースペースを設置する)
RF 芝生広場・テラス席(持ち込み飲食ができる開放的な空間で、利用者が読書やコミュニケーションを楽しむことができる環境を提供する)、ミニトレイン(子供たちが乗ることができる、旧市電を模したミニトレインを走らせる)
3、市民図書館移転による効果等について
・和歌山市駅利用者の来館が増加した
・毎月5万人以上の来館者で賑わっている
・学習室を拡充したことにより、生徒、学生は当然のことながら一般の方の学習・研究利用が大幅に増えた。
・1階のカフェ(スターバックスコーヒー)が人気で、ドリンク片手に利用される方が多い。
・こどもフロアが4階にあり、安心して子どもを遊ばせられる空間として子育て世代の利用を促進している。
・4階の飲食できるスペースは、子育て世代の利用者に好評である。
・図書閲覧用の椅子やソファを増やしたことで、くつろぎながら読書ができるようになった。
・指定管理者による様々なイベントが充実していて、来館のきっかけとなっている。
・商業施設と隣接することによる相乗効果が見られる。
・駅周辺の賑わい創出に寄与している。
4、所感
1)カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社が指定管理している公立図書館を視察するのは3館目だが、いずれの図書館も天井まで本棚を設ける等造作が似ている。ただ、武雄市図書館、多賀城市立図書館にくらべると、社会科学系の選書が充実しているようだった。 ・新図書館に移行後、利用者の平均滞在時間が2時間ほどと、旧図書館にくらべて飛躍的に増えたそうだが、それも当然と思わせる、落ち着いたたたずまいのインテリアが取り入れられているのが、印象に残った。