【概 要】
大阪府泉佐野市は、泉南市と田尻町とともに、その行政区分の一角を担う関西国際空港と、それに付随する施設「りんくうタウン」が開設されるにあたり、前市長は多大の事業を展開させた結果、多くの負債を抱え込んでしまった。
関西国際空港の開港に合わせて、短期間に、下水道や病院、宅地造成などに巨額の投資を行ったためである。
それを証明するかのように、平成5年度から6年度への市財政歳出額における伸び率は全国一を記録している。
その翌年度にかけても、文化センター建設のために、泉佐野市は大幅な歳出額の増額を計上している。
その影響で、平成14年度の経常収支比率は、107%超であった。
なかでも宅地造成事業計画は、失敗の最たるものであった。
造成費用は借入金で賄い、売却益で返済していく計画だったが、売却が予想を大きく下回り、駐車場などへの暫定利用を細々と続けているのが現状である。
しかし、見込んでいた需要は結局、相応なものは泉佐野市にもたらされず、その負債は市財政を急速に圧迫することとなった。
その結果、平成8〜11年度の予算では、毎年約30億円もの税収見込みにおける減収が生じた。
そのために、現市長になってから、泉佐野市は平成16年に「財政非常事態宣言」を行い、市長は自らの報酬を25%減額させた。
また市職員の給料を、36ヶ月にわたって平均2.4%上げないことを決めた。その結果、初年度は2.4%、次年度は4.8%、3年度目は7.2%も、給料が減額されることとなった。
その結果、経常収支比率は、107%から99%への下落を実現し、同時に、ラスパイレス指数は106%から93.9%に減り、大阪府での最下位に位置するまでに落とした。
人件費は現市長になり、20億円の削減に成功し、それに付随して、大阪府からの補助金は大幅に増額された。
また、職員数の減員にも現市長は大鉈を振るい、100人もの削減に成功した。
その際、早期退職制度を導入し、45歳を下限に適用している。
ただ、税収約185億円のうち、約50億円は関西国際空港関連なので、見込みの税収より低額とはいえ、泉佐野市にとっては非常に重要な税源であることには変わりない。
【所 感】
関西国際空港開港に伴う前市長による、大規模開発の件に関しては、前市長にのみその責任を負わすのは適当とは言えない。
なぜならば、関西国際空港の新設時、中央政府も大阪府もこぞって大規模開発を奨励し、その負債を歓迎した経緯があったからである。
つまり、内需拡大を目指す、公共投資の奨励である。
泉佐野市は、その奨励と開港に伴う需要増大を見込み、大規模開発に着手した。
ところが、開港しても思うように需要は伸びず、また、中央政府は財政難を理由に、三位一体改革を推進した結果、交付金、国庫支出金ともに減額し、そのため、泉佐野市には、巨額の負債がのしかかることとなった。
それに手を拱いていたわけではなく、泉佐野市は平成8年に、行財政改革推進本部を設置し、行財政改革に踏み出した。
その結果、平成12年度から15年度にかけて149億4千万円の、効果額を生み出すことに成功した。
歳出における減額で目につくのは、職員駐車場の市負担廃止などの事務事業からの撤退に伴う34億円が挙げられるが、歳入において目についたのは、中央政府と府の支援による健全化債や府貸付金の30億円7千万円だった。
つまり、市の負担を減らす行政改革の推進とともに、財政健全化の際にもやはり、市の行政改革が条件とは言いながら、中央政府や府の援助を仰ぐ構造がある、ということである。
また、その行財政改革とは、多くの場合、人件費の縮減を指し、市長をはじめ職員給与の減額と、議員定数の縮減等職員数の削減が該当する。
これをオランダのように、ワークシェアリングの活用等によって、もっと“優しい”行財政改革はできないものかと思ったが、その実行には大いなる手腕が伴うことも、また考慮されなければならない。