1、「三重県議会」
【1】三重県議会における議会改革の経緯
1)改革のはじまり
平成7年に、地方自治体での官官接待や予算の不適正執行が大きな問題となったことを契機に、三重県議会においては議長を中心に、議会の諸問題について、改革・改善を行うこととなった。
[1]議会に係る諸問題検討委員会
同年10月31日に、「議会に係る諸問題検討委員会」が設置され、そこでの検討を踏まえ、優待パスの全廃や、会期中の休会日は、議案等にかかる調査、会議等により登庁した場合のみ旅費を支給する、海外視察の復命書の作成、議会広報の充実等の改革が実施された。
2)本格的な改革の取組み
その後、地方分権等社会情勢の変化や執行機関の改革に呼応し、本格的な改革に取り組むため、委員会を設置し、幅広い項目について検討し、改革に取り組んだ。
(1)議会改革検討委員会
平成8年9月6日、各派交渉委員会で一層の議会改革に取り組むため、三重県議会改革検討委員会設置要綱を制定し、議長、副議長及び各会派代表者の6名を構成委員とした「議会改革検討委員会」を設置した。
同委員会は、平成9年2月21日に終了するまでの間に12回開催し、下記の改革を行った。
・県内調査の際の執行部との懇談会の廃止
・常任・特別委員会の県内調査への執行部の随行廃止
・三重県情報公開条例の実施機関に議会が加わること
・本会議における一般質問のテレビ中継の実施
・委員会の会議録の作成
同年6月19日に「議会改革検討委員会」を再開し、平成10年5月12日に廃止されるまで、10回の委員会を開催し、下記の改革を行った。
・選挙区定数調査特別委員会の設置
・委員会室に入りきれない傍聴者のためのテレビモニターの設置
・予算決算特別委員会の設置
・議長交際費・海外視察・県外調査の定期的情報提供
・委員会・全員協議会・議案聴取会の禁煙
・政務調査費(現企画法務課)作成資料の図書室での公開
(2)代表者会議等での議会改革関連協議事項
議会改革検討委員会の廃止後は、必要に応じて代表者会議等で協議し改革を行った。それを下記に列挙する。
・議長・委員長等の充て職の原則廃止
・議員連盟の見直し
・県政調査研究費交付金の見直し
・議員の海外視察の見直し
・議員の海外視察調査時の支度料の廃止
・応招旅費を廃止して普通旅費に一元化
・議員の海外視察調査制度の廃止
・会期の変更に伴い、費用弁償の支給対象を整理
(3)基本理念と基本方向を定める決議
平成14年3月20日、「三重県議会の基本理念と基本方向を定める決議案」が全会一致で議決された。
(4)議会改革推進会議
平成15年10月10日に、全議員参加のもとに、地方分権に相応しい三重県議会及び都道府県議会のあり方について調査研究を進めるとともに、改革を目指す他の都道府県議会との相互交流を図ることを目的に、議会改革推進会議を設置した。
(5)三重県議会基本条例
平成18年12月20日、議会の基本理念及び基本方針を定め、議会の役割を明らかにし、県民の負託にこたえることにより、県民福祉の向上と県勢の伸展に寄与することを目的として、「三重県議会基本条例案」は全会一致をもって可決され、同条例は同月26日に公布、施行された。
同条例の特色は、下記の通りである。
[1]これまでの本県議会の歩みを踏まえ、議会の基本理念及び基本方針を示し、議会運営や議員の活動原則等を明らかにしています。
[2]住民が自治体の長と議員をそれぞれ直接選挙するという二元代表制を明記するとともに、議会と知事等及び県民との関係を規定しています。
[3]会派活動について規定しています。
[4]議会が有する機能強化のため、附属機関、調査機関、検討会等の設置について規定しています。
[5]会議の公開など情報公開を推進し、政務調査費の使途についても透明性を確保する旨規定しています。
[6]議会改革推進会議を設置し、継続的に議会改革に取り組むとともに、他の自治体議会との交流及び連携の推進について明記しています。
(6)三重県議会議員の政治倫理に関する条例
政治倫理確立のための議員の責務と政治倫理基準等を定めることを目的として、「三重県議会の政治倫理に関する条例案」が全会一致で可決し、同条例は、平成18年12月26日に公布、施行された。
(7)三重県政務調査費の交付に関する条例の改正
「三重県政務調査費の交付に関する条例の一部を改正する条例案」が全会一致で可決され、平成19年5月1日に施行された。
同条例は、透明性の一層の確保のため、改正後、平成20年4月1日に施行された。
【2】住民本位の政策決定と政策監視・評価の推進
三重県議会は、議会本来の機能といえる政策の決定、監視・評価に対する、住民の立場での真摯な取組を行ったが、以下にそのうち眼に留まった諸点について記述する。
1)議決機関としての政策決定の推進
執行機関からの要請により、各種計画づくりの審議会等に議員が委員として就任することがあったが、それを原則として辞退することとしたほか、充て職による県出資法人等の役員就任の見直しなどを行い、執行機関との間に一定の距離を置くような見直しを行ってきた。その結果、議員の就任は44機関から29機関に減少した。
2)会期等の見直し
平成19年12月20日、議員発議による「三重県議会定例会の招集回数に関する条例の一部を改正する条例案」を全会一致で可決したことにより、定例会の召集回数が平成20年から、年2回となり、年間総会期日数を240日程度に増やす。
3)本会議の運営方法等
従来は、一般質問として行っていた質疑質問を「議案に関する質疑」と「県政に対する質問」とに分離して行う。
4)委員会の運営方法等
常任委員会開催日数を増やし、議員間討議の時間設定を行う。
5)予算決算常任委員会の設置、改革
平成10年度から、都道府県議会では唯一、予算と決算を総合的に審査調査する予算決算特別委員会を設置しました。
そこでは、予算案として提出される以前の予算調製方針や予算要求状況などの予算編成が始まる以前や予算要求の段階から調査を行い、意見、提言を行ってきた。
平成18年6月の地方自治法改正により、常任委員会の複数所属が可能となったことに伴い、委員会条例を改正し、平成19年4月30日から予算決算常任委員会を設置しました。
予算案の審査については、従来の常任委員会への分割付託から当委員会への一括付託としました。
2、「伊賀市議会」
(1)伊賀市議会基本条例
同条例が、伊賀市議会における最高規範であり、その特徴は、以下の7点である。
1)市民との意見交換の場である「議会報告会」の設置
2)市民に分かりやすい議会議論並びに審議論点の明確化のため「一問一答方式の導入」と「行政への反問権の付与」
3)政策の公正、透明性の確保と議会審議での論点情報の形成のため、行政に対し「情報の発生源など7項目」の提出を求める
[1]政策の発生源
[2]提案に至るまでの経緯
[3]他の自治体の類似する政策との比較検討
[4]市民参加の実施の有無とその内容
[5]総合計画との整合性
[6]財源措置
[7]将来にわたるコスト計算
4)二元代表制の一翼を担う議会としての共通認識の醸成を図るなどの「政策討論会」の設置
5)委員会は市民からの要請に応じ、審査の経過等を説明するため常任、特別委員会などの活動の一環として「出前講座」を積極的に行うよう努める。
6)議案に対する各議員の対応を議会広報で公表する。
7)議員定数と議員報酬は、議会に決定権が存するため「議員提案」を行う。
なお、今後の課題としては、議会モニター制度の創設を考えているとのことでした。
(2)伊賀市自治基本条例
平成12年4月に地方分権一括法が施行されたことを受け、伊賀市は平成16年6月から伊賀市自治基本条例が検討され、同年12月議会で可決、12月24日に公布・施行された。
上記自治基本条例において、特に注目されるのは、住民自治協議会を定義し、要件を定めていることである。
自治基本条例にみる住民自治協議会とは、共同体意識の形成が可能な一定の地域において、そこに住むあらゆる人が自由に参加でき、地縁団体や目的別団体などとともに、身近に地域の課題を話し合い、解決できるよう、地域住民により自発的に設置された組織である。
その住民自治協議会は、同条例により、下記の4つの権能があたえられている。
1、諮問権
同協議会は、市長の諮問に応じ、当該地区に係る事項を調査審議し、市長に答申する。市長は、住民自治協議会の答申を尊重しなければならない。
2、提案権
同協議会は、当該地区において行われる住民に身近な市の自治の執行等について、当該組織の決定を経て、市長に提案することができる。
3、同意権
市長は、当該地区において行われる住民生活との関わりの深い市の事務で、当該地区に重大な影響が及ぶと考えられるものについて、あらかじめ住民自治協議会の同意を得るものとする。
4、決定権
市長は、当該地区において行うことが有効と考えられる市の事務について、住民自治協議会が当該事務の受託を行う意思を決定した場合は、その決定を尊重する。
(3)その他
[1]重要な施策について、議員同士の議論を交わす場の設定に腐心した、という現職議員の意見になるほど、と思った。
[2]議員として、市民の意見を聴取するのは大事だが、事前に、市民の意見を聴取しておかない議員は怠慢である、という意見にも賛同した次第である。
3、「四日市市議会」
(1)四日市市議会の活性化
1)議案聴取会の実施
2)市政活性化推進等議員懇談会(市活懇)
○平成12年8月11日に設置された。
○位置づけは、議長の諮問機関である。
○設置目的は、(1)市行政を取り巻く様々な課題について、議員全員で議論を行い、その結果に基づき、議会としての政策を立案し、市政の活性化に資する。
(2)議会の諸課題について、議員全員で議論を行う場とする。
の以上2点である。
○設置の経緯は、平成12年6月27日に開催された各派代表者会議において、議会改革に熱心に取り組んでいた当時の議長から「現在の議会は執行部から提出された議案を審査するのみにとどまっているのではないか。また、議員全員が本音で議論する機会が少ないと思う。今後、議会の自主的な意見交換の場を設定して、執行部に対して政策を立案、提言していくことができるような体制を設定してはどうか」との提案がなされ、協議の結果、議長の提案通り、議長の諮問機関として設置することを決定した。
○そこで今までに取り上げた項目には、下記のものがある。
・地方分権の推進における地方議会について
・地方自治法第96条第2項について
・市長専決処分事項の指定について
・議員提案による条例案について
○効果として、議会が、議案外の市の重要政策について意思決定を行う必要がある場合、懇談会の開催は有効であった、そうである。
○課題は、執行部に対して政策を立案、提言していくことができるような課題の選定について検討していく必要がある、とのことであった。
3)議員政策研究会の設置
4)議会活性化検討会
5)地方自治法第96条第2項の活用
6)議員提案による政策条例制定改正への取り組み
7)市外郭団体審議会
8)一般質問の時間制限の緩和および日程の増加
9)予算特別委員会の設置
従来は所管の各常任委員会に分割付託を行っていた当初予算について、特別委員会を設置して一括付託することとし、効果的、効率的な審議を図ることとした。
10)一問一答方式の採用、質問者席の設置(対面式)
11)マニフェスト大賞審査委員会特別賞の受賞
(2)四日市市議会の透明化
1)委員会の公開
2)委員会室へのマイク設備、傍聴用テレビカメラの設置
3)議会ホームページの開設
4)本会議のテレビ中継の実施
5)四日市市議会政治倫理要綱の制定
6)正副議長選挙における立候補制の導入
7)委員会の開催方法の変更
8)市議会情報化検討委員会
9)議会報の充実
質問議員全員1項目を掲載し、その際、氏名・顔写真を掲載している。
10)「FMよっかいち」による本会議、委員会中継
11)議会モニターの設置
12)広報広聴委員会の設置
13)シティ・ミーティングの開催
議会が地域へ出かけ、市民への議会活動について説明・報告し、市民の要望を把握する意見交換会の開催。
平成18年11月には3回開催し、意見交換を行った。
(3)議会事務局の体制整備
議員提案案件の増加にともない事務局体制を整備した。
また、調査係を調査法制係へと組織変更した。
調査法制係は、後に、調査法制係と広報広聴係に分割し、事務局職員がより専門的な知識、能力を習得、発揮できるようにした。