北海道釧路市、視察項目「市立釧路図書館への指定管理制度導入の現状」
1、図書館運営概要−指定管理者について
平成20年度より、市立釧路図書館(本館)の運営に指定管理者制度を導入し、株式会社図書館流通センターが指定管理者となる。1期3年(平成20‐22年)の指定管理期間終了後、プロポーザルによる公募と選考を経て、再度、同社が指定される。なお、同指定管理者が受託してからの5年間での職員定着率は、総採用者29名に対して総離職者3名であったため、89.7%であった。
指定管理業務の定めにない経費やリスクの負担については、その都度協議の上で決定している。また、収益を伴う自主事業の実施については、事業単位で教育委員会に個別に承認を得た上で実施している。
釧路市に対しては、利用推移、蔵書取得等について毎月の業務報告を行うほか、年度単位で、事業報告を翌年5月末までに提出することが義務付けられている。
2、指定管理者の主要業務
(1)図書館サービス
カウンター業務全般・複写・資料整理・選書等
(2)事業等
図書推進イベント・実習、職場体験の受入・学校図書館支援・郷土資料の収集と提供・市内イベント関連展示
ほかに、施設管理、経理・庶務事務がある。
3、日常管理・利用実績について
指定管理者制度導入後の主なサービス要件の変更
(1)開館日の増加(祝日休館の廃止)
(2)開館時間の延長(旧18:30閉館⇒新19:30閉館)
(3)コピー料金の値下げ(旧20円/枚⇒新10円/枚)
(4)予約点数(5点⇒10点)、CD貸出点数(2点⇒5点)と増加
(5)個人情報取扱の厳格化と帳票保存年限の適正化
(6)市民強力型の事業/イベント運営の推進
(7)雑誌オーナー制度導入による民間協力による蔵書の充実
(8)セルフコピーの導入
4、主要事業
事業運営にあたっての基本的な考え方
・図書館の既存利用者は市民の4割程度なので、残り6割の取り込みが急務であり、全市民向けサービス提供を目指す。そのため、以降の図書館利用につながる導入事業を多く手がける。
・図書館は、利用を通じて、市民が見識を高めたり、興味・関心が近しい仲間と出会える場として、地域内の個人・団体の生涯学習活動の成果発表の場として、施設を活用していただくことを目的に、事業運営をできるだけ外部団体、機関とのタイアップで進めるようにする。
・上記に付随して、自分の学習成果を発表したいと思いつつ、発表の方途を知らない市民も多くいる。そうした方々に向け、共催のかたちで事業運営を行い、初回市民の文化活動の主な活性化に寄与したい。
・市民の図書館として、住民に物心両面から、積極的に図書館運営に関わっていただけるよう、運営全般にわたって市民協働スタイルのメニューづくりを手がける。
5、指定管理導入の第1期における仕様書にあった枢要な理由
(1)民間のノウハウを活かして、新しいサービスや事業が展開でき、利用者ニーズにも速やかに対応できるなど、現状よりも利用者サービスの向上が図られる。
(2)専門的人材の確保や効率的な人材配置等人的資源の整備が図られる
・専門性と経営能力をもった館長や職員の採用
・目的意識の高い集団の形成
・給与水準と業務効果のバランスのとれた職員構成
(3)柔軟な発想による経費の合理的・効果的な運用によるコストダウン
6、指定管理者導入に関する総括
現時点では、市立釧路図書館は指定管理者導入によってサービスが向上し、図書館の設置目的に適った運営が図られていると認識している。また、釧路市社会教育施設等運営審議会による外部評価においても、「目標をほぼ達成し、適切に運営されている」との評価であった。
7、所感
図書館の運営を指定管理者に委ねることは、釧路市立図書館に限らず、少なくない自治体において行われている。
市立釧路図書館の指定管理者の指定を受けた図書館流通センターは、全国で約150館において指定を受けている会社である。
指定管理制度を導入したことで、同図書館は、市民の多様な図書館へのニーズに速やかに対応できるようになったものと考えた次第である。