つい先だって、8月30日に映画監督のJ・リー・トンプソンが88歳にしてお亡くなりになりました。代表作に「ナバロンの要塞」や「恐怖の岬」があります。
この監督による「恐怖の岬」は見てはいないのですが、ロバート・デ・ニーロ主演で「ケープフィアー」と改題されたリメイク版は、テレビで見たことがあります。
何度もテレビで放送されていますから、この「ケープフィアー」をご覧になった方は多々いらっしゃるでしょうが、念のためごく大雑把に筋をお話しますと、弁護士の腕が悪いから、実刑を課せられたと思い込んだ被告が、出所後、その弁護士に嫌がらせをし、遂には自分が破滅してしまうというものでした。
つまり、身に覚えのない逆恨みによって、弁護士一家がしつこく脅迫されるという恐怖を描いたものですが、脅迫する元の被告は、精神に異常を来たしており、今年から呼称を変更し「統合失調症」となり、以前は「精神分裂病」と呼ばれた精神病者という設定です。それを、デ・ニーロが迫真の演技によって、観客を堪能させてくれたのでした。
そういえば、俳優の榎木孝明さんや市川猿之助さんも、始めは単なる一ファンだと思い接していたのが、実はストーカーだったので、以後自分に近づけないように、行政処分申請を出し、それは受理されました。
これは怖いものでして、我々落語家と先述の俳優さんを同列には扱えないでしょうが、我々にも一応ファンと呼べるようなお客様がいらっしゃいます。そういう方々とは、適度に不即不離といったお付き合いをさせていただくのですが、この間合いというのがなかなか難しいのです。
また近頃は、HPを持っている芸人が増えたため、どうかするとその落語家の落語をHPで聞いてファンになってくださるという、一昔前では思いもつかないようなファンもいます。
じつはぼくにもそんなファンがいまして、先日困ったメールが届きました。というのも、「高座から私(=女性)をヘンな眼で見ないで」というものでした。たしかに、高座から特定のお客様に視線を送ることは出来ますが、その方とはメールでのみやり取りをしているものですから、「ヘンな眼」も何も、そのお客様がどんな容貌をしているのかも、こちらは分からないのです。どうしたら顔かたちの知らない方を「ヘンな眼」で見られるのか、こちらこそ教えていただきたいものです。
ことここに至り、やっとぼくにも分かったのです。この方は、相当高い確率で統合失調症を患っているではないのかということが。
もしもそうならば、厄介ですよね。通例として、自分こそまっとうで、相手に非があると、信じ込んでいるのに相違ないからです。
便利になるとなにが災いするか分かりません。