さる一月二四日に内閣府が「文化に関する世論調査」の調査結果を発表しました。
そこで文化庁が指摘しているのは、「趣味や娯楽が多様化する一方で、伝統芸能に関心が向かなくなっている」という、我々伝統芸能の実践者には、アンハッピーな報告まで添えて。
この調査は、一九八七年九六年に続いて三回目となるもので、昨年の十一月に全国の成人三千人を対象に実施され、回収率は69.8パーセントといいますから、約七割。
映画や音楽、演劇をこの一年間にホールや劇場などの施設で鑑賞したことがあると答えた人は50.9パーセントで九六年前回調査から減少。テレビやビデオ、CDなど家庭用機器で観賞すると答えた人は86.5パーセントで、前回調査から0.9ポイント減りましたが、高い水準を維持しました。
ではなぜ、施設で「鑑賞したものはない」と答えたのか。その理由として、「あまり関心がないから」が39.5パーセントで前回調査から11.7パーセントも増加。
ただその理由は、「近くで公演や展覧会などをやっていないから」が20.3パーセントから13.0パーセントに、「情報が入手できないから」は8.1パーセントから4.4パーセント、という具合に減っていることから、施設が充実していないからというわけではなく、また情報が入手できていないからというわけでもなさそうです。
情報量もたっぷりとあり、また施設も充実したのにもかかわらず、足を運んで鑑賞しようというお客様が減っているという現実は、アンケート調査で示されたように、どうもイヴェントそのものへの関心と足を運ぶというアクションとが乖離し始めた兆候を現しているのではないでしょうか。
我々にとって決定的なのは、歌舞伎や文楽、落語などの伝統芸能を、劇場や寄席などの施設で鑑賞したことが「特にない」と答えた人の割合が、74.2パーセントと前回に較べて3.1ポイントも増えてしまったことです。
つまり、日本の成人四人のうち三人は、寄席にこの一年の間、ただの一度も行っていないということです。この四人のうち三人というのは、歌舞伎、文楽と併せての数ですから実際にはもっと多いのです。
ただ考えようによっては、これだけ選択の幅が拡がった今日でもなお、四人のうち一人は、わざわざ寄席にまで足を運んでくださっている、という考えもまた成り立つのです。
つまり、三百年の時を隔て江戸時代から連綿として今に伝わる落語=寄席に、これだけの方々が来てくださるのですから、寄席は楽しい遊び場なのだという認識を、現代の方々に持っていただかないといけないわけです。
たとえば、三百年後でもディズニーランドは流行っているのでしょうか。疑問ありです。