町田市議会議員 会派「自由民主党」/(一社)落語協会 真打 三遊亭らん丈【公式ウェブサイト】

三遊亭 らん丈

「民族芸能」vol.108らん丈の、我ら落語家群像

2004.03.01(月)

 久しい間、芸人に仕事を頼む手段は、ほとんど電話に頼っていました。
 それが近年、ホームページで情報を獲得した依頼人が電子メールで出演の可否を尋ねてくるようになったのです。

 これなどは、「IT」の最たる例ですし、実際、この原稿にしろ、メールで送信します。

 先日、NHKから出演依頼がありましたが、これもぼくのことをHPで調べて興味を持ったから、ということでした。

 とんとん拍子に出演が決まり、収録の段になりました。どうしても落語のシーンが欲しいというので、それを撮ることになったのですが、面白かったのは、それを聞いた素人さんの反応でした。

 つまり、放送時間は五分で、落語のシーンはせいぜい二分、ということを知らせてから、収録に取り掛かったのですが、それを聞いたあるお客さんが、「すると、二分間撮るんですね」というのです。

 たしかに、放送される時間は二分間ではあっても、ご存じのように、その二分間のために、どれだけ長時間にわたってカメラを回すのかを、そのお客さんは、ご存じなかったのです。今回は、四十分ほどは撮っていたでしょうか。そんなもんでしょう。

 二分間の放送のために、二分間だけ収録するというのならば、映像関係者はどれだけ楽でしょうか。

 最近はテレビでNG特集を組んだバラエティがあるようですが、それでも、監督のOKが出るまで、何十回となく同じシーンを撮る、ということを知らない方がいるのですね。

 時あたかも、この会報が出る頃は、アテネオリンピックの真っ最中です。
 普段は、テレビをほとんど見ないぼくのような者でも、さすがにチャンネルを合わせる機会が増えると思います。

 その際我々は、精進を重ねた選手のほんの一瞬にしか、立ち会うことができません。

 ですから、一人でも多くの選手、ひとつでも多くの競技を見たいと思うのです。

 なのにテレビは、だれもが知っているほんの一部の有名選手、あるいは、誰もが親しみを抱いている、既によく知っている競技ばかり、波状攻撃を仕掛けるように、狙って放送するのです。

 ぼくなぞが言ったところでどうなるものでもありませんが、見たことも聞いたこともないような競技を、折角の機会ですから、とっくりと見たいのです。

 こういうと、「やってるよ。衛星放送やデジタル放送をみてごらん」というお答えをいただきそうな気がします。
 でもね、ぼくは生憎と、どちらも契約していないので受信できないのですよ。といって、オリンピックのタメに、契約しようとも思いませんが。