町田市議会議員 会派「自由民主党」/(一社)落語協会 真打 三遊亭らん丈【公式ウェブサイト】

三遊亭 らん丈

らん丈の、我ら落語家群像 記事一覧らん丈の、我ら落語家群像

「民族芸能」vol.68

2000.11.01(水)

 先日電車に乗っていると、傍らの中年男性二人の会話が耳に入ってきました。そこで盛んに「会いてえ、会いてえ」と云っている。妙齢の女性にでも逢いたいのかと、羨ましくも尚、会話を聞くともなく聞いているとどうも様子がおかしい。すると今度は「あ、痛え」と云い始めた。ことここに至ってやっと分かりました。つまりその中年男性はITと云っていたのです。森首相の「イット」に較べれば、間違ってはいないだけに微笑ましい。

 いまや日本では、携帯電話とPHSが併せて六千万台以上普及しているそうですから、赤ん坊から百歳のお年寄りまで二人に一人はどちらかを持っている勘定になります。それがために公衆電話がどんどん撤去されています。これを称してテレハラと云うそうです。

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「民族芸能」vol.67

2000.10.01(日)

 二十世紀の掉尾を飾るプロ野球日本シリーズがいよいよ二十一日から始まります。今年はその対決が、待望久しかった長嶋ジャイアンツと王ホークスによるものですから、興(球)趣はいやが上にも盛り上がっています。

 ぼくが噺家になる以前は、三遊亭圓窓師匠率いる”ダジャレーズ”や古今亭志ん駒師匠率いる”ヨイショーズ”、春風亭小朝師匠率いる”ワカサマズ”等等の落語家野球チームがあったらしいのですが、らしいと言うだけで確認は取れておりません。間違っていたら、御免なさい。お詫び申し上げます。

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「民族芸能」vol.66

2000.09.01(金)

 断るまでもなく、我らがホームグラウンドは寄席です。その寄席は原則として十日間毎に出演者が変わります。つまり、毎月一日から十日までを上席、十一日から二十日までを中席、二十一日から二月に限り月末まで、それ以外は三十日までを下席、そして三十一日は普通、余一会を開きます。

 そのうち、三十一日を除いて一の日を初日、五の日を中日、各席の最終日を楽日と呼んでいます。これしきのことは、落研の学生でも知っていることでしょうが、弟子は師匠のお宅へいつ伺うのかとなると、部外者には見当も付かないでしょう。

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「民族芸能」vol.63

2000.06.01(木)

 年を取ると、若い頃やり損ねたことをしたくなるものだと聞いていました。中年に至り念願叶って若いときに充分出来なかったことを始めると、俗に云う「七つ下がりの雨」になってしまいます。それは、文字通り四十歳過ぎてからの病気だそうです。

 若い頃勉強ばかりしていた堅物が四十にして、突如遊びに目覚め「遊びをせむとや生まれけむ」状態になってしまったのを、身の回りに見つけるのは、さほど難しいことではないでしょう。これは他人事ではなく、実はぼく自身がそうなってしまったのです。もちろんぼくは若い頃、勉強をした事実は一切なく、その逆で若い頃の不勉強ぶりを呪ってばかりいたものです。そろそろ呪い疲れたので、じゃあ勉強とやらを生まれて初めてやってみようかということで、酔狂にも今春、十九年ぶりに大学へ入り直しました。今更大学へ入り直す一点を取ってみても、いかにぼくが間抜けであるかの、何よりの証左となるでしょう。

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