2001年で忘れられない日に、ニューヨーク貿易センタービルがテロによって壊滅した9.11がありますが、われわれ落語家にとっては、10.1つまり、古今亭志ん朝師匠の命日もこれに劣らず、忘れられない日です。一周忌の法要がそのお人柄を表すように、東京會舘で盛大に営まれ、ぼくも落語家の端くれとして、出席させていただいたのです。
スピーチは、志ん朝師匠のおかみさん、三遊亭圓歌落語協会会長、長老・森繁久弥さん、親友・寺田農さん、くわえて前日の9月30日をもって金融担当相を更迭されたばかりの話題の人、柳沢伯夫代議士と、ごくシンプルなものでした。
柳沢さんは、スピーチ冒頭で「おかげさまで昨日をもって閣僚を辞任して、時間に余裕が出来たので、こうして志ん朝師匠の法要にも出席できます」とやって、満場の喝采を浴びていました。
その日は、昨年の10.1と同様に涙雨が東京に降り注がれ、今年はそれ以上に、10月に関東地方に上陸した台風の中では戦後最大級といわれる21号が、暴風と豪雨を撒き散らしながら、志ん朝師匠の一周忌を悼んだのでした。
その翌日、2日の東京は朝から、「台風一過」で爽やかな好天に恵まれています。ところがこれを、某局アナはてっきり「台風一家」だと思い込んでいたそうです。つまり、一個の台風ではなくファミリーのように複数の台風が通り過ぎたから、かくも爽やかな好天がもたらされると解釈した結果、「台風一家」となったわけです。
言葉のプロでありながらの「局アナの日本語知らず」は今に始まったことではないので、ぼくはさほど驚きませんでしたが、日本語に厳しかった志ん朝師匠が聞いたら、さぞや嘆かれたことでしょう。
さて、今年は10月1日を期して色んな変化がありました。以下に、眼についたもののみ列挙してみましょう。
1.国民健康保険の自己負担割合が70歳を境に変わりました。
日本は、低負担高給付の国です。それが証拠に、日本の国家予算は80兆円強の支出に対して、税収は50兆円以下しかありません。ところが困ったことに、給付に見合う適正な負担を実現させる説明能力が、日本の施政者にはないのが現状です。だからこそ、構造改革が眼に見えて進捗しないのです。今回の改正により、70歳以上の方は所得に応じて、負担額が相違するようになります。高所得を得る方が、低所得の方より高い医療費を担うようになるわけです。遅きに失した措置というべきでしょう。
2.東京都独自の法定外目的税として、新たに一泊1万円以上の宿泊費に、ホテル税が課税されるようになりました。
3.東京都千代田区では、千代田区生活環境条例が施行され、指定された路上禁煙地区での喫煙や吸殻のポイ捨ては全面的に禁止されました。
2も3も、2000年4月に施行された地方分権一括法によって促進された、地方自治強化の流れのうえにできた法律です。もはや、政策は地方政府が先導し、中央政府が後追いするというのが常態化したようです。つまり、住民はその属する地方政府によって生活の質が、大きく相異してしまうのです。
4.身体障害者補助犬法の施行。
しょうがい者の自立を助ける盲導犬、介助犬、聴導犬の公共施設や交通機関への同伴を保証するもの。社会常識的にみて、あまりにも遅い導入と言わざるを得ません。
5.朝日新聞ではこの日から、一般死亡記事の敬称を「さん」に統一しました。
それまでは、男性は「氏」、女性は「さん」でしたが、性同一性障害によって途中で性を変える人がいるのですから、不適当な表示であり、なによりも男女で敬称を分けるというのも、合理的なことではありません。
もうひとつ、これは中国文学者の高島俊男さんが指摘していることですが、そもそも、たとえば小泉純一郎氏という書き方は、おかしいのです。「氏」なのですから、小泉氏ならば構わないのですが、小泉純一郎氏はおかしいでしょう。どうしても、「氏」を入れたいのであれば、小泉「氏」純一郎君とでも書くべきではないでしょうか。
それが証拠に、この書き方は明治以降のもので、織田信長氏とか豊臣秀吉氏とは決して言わないでしょう。明治になって、英語のミスター、ドイツ語のヘル、フランス語のムッシューを「氏」と訳し、それを日本人に適用して、ミスター伊藤博文、伊藤博文氏、というようになったのです。
ですから、「さん」に統一したというのは、ごく当然の改定なのです。
これは毎年のことなのですが、10月1日から赤い羽根募金活動が始まると、NHKのアナウンサー、政治家は必ずといってもいいほど、スーツの襟に赤い羽根を付けますね。
たまたま、テレビで午前6時のNHKニュースを見たのですが、そのアナウンサーも赤い羽根を付けていたのです。そんなに早くから募金活動をしているのでしょうか。とても不思議に思ったのでした。
そして、あの赤い羽根はいったいいつまで付けているのでしょうかね。やはり、賞味期限というのがあるのでしょうか。