町田市議会議員 会派「自由民主党」/(一社)落語協会 真打 三遊亭らん丈【公式ウェブサイト】

三遊亭 らん丈

エコネット町田 「新自由主義改革の比較政治学」町田の、らん丈

2012.11.25(日)

T&D 「新自由主義改革の比較政治学」 2012/08/26
 1980年代のサッチャー、レーガン政権を皮切りにして世界各国で開始された新自由主義改革は、現代政治のあり方に大きな変化をもたらすこととなった。日本においても、1990年代後半以降「構造改革」という名のもとに、既存の国家と社会の仕組みを大きく再編する改革が行われ、そのなかで貧困や格差拡大といった社会問題も生じている。新自由主義改革が、なぜ起こり、何をもたらしたのか、を理解することは、現代政治の現状と今後の行方を考えていくうえで必要不可欠なことであることから、今回このテーマを取り上げました。なお、この原稿は字数の関係から説明は省かせていただいて箇条書きにしております。

現代国会の類型 日本
1、戦後改革と日本の民主化
(1)日本の民主化の特異性
 下からでもなく上からでもなく、横からの民主化
(2)戦後改革と新憲法の制定
(A)アメリカの占領方針
⇒アジアの平和と安定のために、侵略国家としての日本を解体し、復活させない
(B)新憲法の制定とその性格
GHQ内の二つの考え方
・市民国家型の構想
・福祉国家型の構想

2、講和・独立と逆コース−1950年代の政治
(1)講和をめぐる政治対立
保守政党:再軍備・米軍の基地使用・片面(単独)講和
社会党:再軍備反対・基地使用反対・全面講和・中立維持
(2)50年代の逆コース
 再軍備の進展:警察予備隊→保安隊→自衛隊

3、岸政権と60年安保闘争
(1)鳩山一郎政権(54−56年)
日ソ国交回復・憲法調査会の設置
(2)岸信介の憲法改正構想と安保改定
岸の考え→安保改定によって国民の支持を集め、その勢いで憲法改正を実現しようとした。
しかし、実際には非常に大きな国民的反対運動を引き起こすことになった。
(3)60年安保闘争
安保に反対した国民意識:反戦・平和主義

4、保守政治の転換と経済成長の政治
(1)60年安保闘争のインパクト
→戦前型の政治への後戻りを不可能にした
 ただし、保守(自民党)から革新(社会党)へと政権を交代させる力はなかった
(2)戦後型保守政治の模索
自民党内の二つの潮流
1、福祉国家派:社会保障政策に力を入れることで、労働者を保守支持層に取り込む
2、経済成長派:経済成長を実現し、国民生活を向上させることで、国民の支持を集める
(3)池田政権(60年−64年)の政治
1、低姿勢(寛容と忍耐)の政治
2、国民所得倍増計画
3、小国主義の政治(任期中の憲法改正を否定)

5、企業社会日本の構造−自民党政治を支えた社会的基盤
(1)60年代以降の政党支持動向
自民党:下落→横ばい
社会党:伸び悩み→下落←平和主義の政党としては国民に認知されていた
(2)企業社会型統合の形成
(A)福祉国家型とは異なる戦後日本の社会統合
(B)日本型雇用の特徴
1、新規学卒一括採用
2、終身雇用
3、年功賃金(家族賃金という形態)
4、企業内技能養成
5、企業別組合
(C)企業社会型社会統合の構造⇒日本型雇用による社会保障の代替
(3)企業社会の諸矛盾⇒長時間労働・過労死

新自由主義改革と現代国家の再編
1、新自由主義をどう理解するか
デヴィッド・ハーヴェイ『新自由主義−その歴史的展開と現在』(作品社、2007年)
「新自由主義とは何よりも、強力な私的所有権、自由市場、自由貿易を特徴とする制度的枠組みの範囲内で個々人の企業活動の自由とその能力とが無制限に発揮されることによって人類の富と福利が最も増大する、と主張する政治的経済的実践の理論である。国家の役割は、こうした実践にふさわしい制度的枠組みを創出し維持することである」(10頁)

(1)新自由主義の類型
新自由主義が改革の対象とするのは何か
イギリス⇒労働組合の弱体化→高賃金の引き下げ?社会保障の削減
日本⇒日本型雇用の縮小→派遣労働の拡大?利益誘導型政治の解体→公共事業投資の縮小

(2)新自由主義の段階
1997年のイギリスの政権交代、2009年の日本の政権交代
第1段階:現代国家の統合策の破壊→小さな政府論→社会的諸矛盾の顕在化
第2段階:社会統合の解体への対応策→日本:所得税・法人税率を下げて消費税率を上げる

(3)新自由主義の諸矛盾
(A)企業の利益と社会の利益の乖離
企業の競争力の回復と格差社会の出現⇒企業の業績が回復しても、貧困や格差の問題が解消しない
(B)新自由主義型経済の不安定性
新自由主義による格差社会化の進行→企業内に余剰資金が蓄積されている→余剰資金の蓄積と貧困化

日本の新自由主義
1、日本の新自由主義改革の特徴
(1)新自由主義改革の遅れ
(2)自民党の自己改革
新自由主義をめぐる対抗関係の錯綜
1, 労働組合の抵抗の弱さ
2,保守勢力(自民党内)からの抵抗
3,自民党政治・官僚政治にたいする左派の批判
(3)新自由主義化と軍事大国化の同時進行
アメリカからの軍事的負担の分担要求・日本の経済界からの自衛隊の海外出動要求

2、新自由主義改革の前段階としての政治改革−1993年政変の意味
(1)政治改革論議の高まり
相次ぐ汚職・政治腐敗 1988年リクルート事件、1992年佐川急便事件
(2)93年政変
93年 小沢一郎グループが自民党から離党(宮沢政権への不信任案に賛成し、新党を結成)
選挙制度改革…中選挙区から小選挙区中心の制度へ
(3)政治改革のねらい
社会党の解体:非武装平和主義からの脱却
自民党の変質:利益誘導型政治からの脱却

3、日本における新自由主義改革の展開(第1段階)
(1)橋本政権(96−98年)による改革の本格的開始
橋本6大改革…財政構造、経済構造、行政、金融、社会保障、教育
背景には財界からの構造改革(新自由主義改革)要求
(2)小渕・森政権による改革の漸進・停滞
公共事業投資の再開
(3)小泉政権(01年−06年)による急進的改革の実行
「聖域なき構造改革」経済財政諮問会議
象徴としての郵政民営化
(4)安倍・福田・麻生政権
新自由主義改革による矛盾の噴出
安倍政権下での新保守主義の台頭

4、日本型雇用の縮小と企業社会型統合の再編
(1)日本型雇用の見直し
1995年日経連『新時代の日本型経営』
⇒日本型雇用の範囲を縮小し、非正規雇用を拡大する
(2)90年代末以降の雇用を不安定化
非正規雇用の増加←派遣労働から製造業にまで拡大
正規雇用の労働条件の悪化←周辺的正規雇用の拡大
失業の増加

5、保守二大政党化と民主党政権
(1)保守二大政党化
構造改革の二歩前進・一歩後退への財界の苛立ち
新自由主義政党としての民主党の育成
(2)小沢一郎のもとでの民主党の変貌
07年参院選マニフェスト
→反構造改革的政策の採用…最低賃金の底上げ、子ども手当、高校授業料無償化、農家への個別所得補償制度
(3)民主党政権の2面性
民主党にたいする二つの異なる期待
 構造改革の継続か、脱構造改革(社会保障・福祉拡充)か